現代俳句協会・日本伝統俳句協会共催シンポジウム「昭和俳句、何が争点?」
日時:2026年4月30日(木)江東区芭蕉記念館で、
参加者:報告者:井上泰至(伝統俳句協会会長)、筑紫磐井(現代俳句協会副会長)
コメンテーター:岸本尚毅(俳人協会理事)、後藤章(現俳専務理事)、
堀田季何(現俳常務理事)
シンポジウムの内容:
第1部「昭和20年代、ふたつの現代俳句―山口誓子vs石田波郷・山本健吉」、
第2部「昭和30年代、現代俳句の分裂と俳壇の動向―金子兜太vs角川源義」
経緯:
第1部・第2部を通じて、井上・筑紫が資料を使って報告、これに対してコメンテーターから発言があった。第2部の最後では、筑紫から「未来俳句宣言」の提案が行われ、最後は会場の数人と質疑が行われた。
以下筑紫の使用した資料を示す。
現代俳句協会・日本伝統俳句協会共催(2026年4月30日@芭蕉記念館)
「昭和俳句、何が争点?」参考資料 (筑紫磐井)
1.3つの調査による人気作家
❶【『現代俳句』誌企画の『私が推す「現代俳句」役員・評議員アンケート』(133件)】
➀金子兜太47,➁池田澄子19,➂富澤赤黄男18,④渡辺白泉17,⑤鈴木六林男12,⑥西東三鬼11,⑥高柳重信11
❷【平成4年11月「俳句」アンケートトップ30(1,681通) 】
▲江戸時代の作家
㉖与謝野蕪村 ㉘松尾芭蕉 ※一茶は無し。
▲明治の作家
⑲高濱虚子 ※子規、碧梧桐、夏目漱石はなし
▲大正の作家
㉕飯田蛇笏 ※渡辺水巴、原石鼎、前田普羅はなし。
▲4S時代
⑦阿波野青畝 ⑰山口誓子 〇水原秋櫻子はなし(前年は⑯) ※高野素十なし
▲新興俳句 なし
▲人間探求派
④加藤楸邨 ⑮石田波郷 ※中村草田男はなし。
▲戦後派
➀飯田龍太 ➁森澄雄 ➂能村登四郎 ⑧藤田湘子 ⑨金子兜太 ⑳清崎敏郎
▲戦後派の次の世代
⑤鷹羽狩行 ⑥角川春樹 ⑩岡本眸 ⑪稲畑汀子 ⑬上田五千石 ㉑有馬朗人
❸【「俳句界」平成29年12月号平成を代表する俳人(175件)】
➀金子兜太(25)➁宇多喜代子、鷹羽狩行(10)④田中裕明(6)⑤有馬朗人、関悦史、高野ムツオ(5)⑧稲畑汀子、正木ゆう子(4)
【まとめ】
➀回答者の所属協会、結社、時代により人気作家は大きく変化する。
➁世代間で興廃が激しい(正岡子規、中村草田男)。
➂昭和(戦後)は龍太の時代、平成は兜太の時代/昭和(戦前)は虚子の時代か?
④分裂した俳句界を統合する理念はまだ生まれていないようだ。
2.現代俳句協会の為の「未来俳句宣言」(wep俳句通信151・152/俳句5月)
(1).未来俳句への認識
➀俳句史の認識
俳句の歴史とは、子規の「新俳句」→新傾向→ホトトギス→新興俳句・人間探求派→社会性俳句→前衛俳句・心象俳句→閉塞の時代(前衛と伝統の固定化)であった。新しい時代の精神は常に前の時代の否定から生まれてきた。今や「閉塞の時代」から「新しい自由な俳句」に進むべきだ。
➁未来俳句の方向性
「伝統」とは、ルールではなく、作品――過去の名作という文学的遺産である。そして過去の俳句で掬いきれなかったものにこそ未来(新しい自由な俳句)がある。
既存の俳句――それがどんな名作であっても、それを操作するだけでは決して「新しい自由な俳句」は生まれない。我々は、過去に見たことのない風景を見たいのだ。
ある日快晴黒い真珠に比喩を磨き 金子兜太
木にのぼりあざやかあざやかアフリカなど 阿部完市
牡丹ていっくに蕪村ずること二三片 加藤郁乎
幾千代も散るは美し明日は三越 攝津幸彦
麿、変? 高山れおな
ビル、がく、ずれて、ゆくな、ん、てきれ、いき、れ なかはられいこ
去年今年貫く棒の如きもの 高濱虚子
➂宣言とは
そうした未来の作品としてのありかたは作家各人が提案すべきものである。それを「宣言」と呼んでみる。かつてアバンギャルドは宣言であった。イタリア未来派宣言、ダダ宣言、シュルレアリスム宣言、形而上派の言説(キリコ『エブドメロス』)・・・。
前衛俳句に自句自解はできない。できるのは宣言だけである。まず宣言があり、それを踏まえた俳句作品が生まれるべきだ。宣言と作品を含めて談論風発が起こる。
(2)具体的宣言
●筑紫の「未来俳句宣言」:いま、新しい自由な俳句として短律に限りない魅力を感じる。
吾(あ)と無 筑紫磐井(GANYMEDEより 2013.8)
渾 煌く犠 (第50回現代俳句講座より/2025.11)
前頭葉にさわさわ湧いて明易 (豈68号より2025.11)
●最近の未来俳句関連の資料
➀未来俳句に寄せてー山根もなか、磯﨑寛也、山本幸生・・BLOG「俳句新空間」連載
➁マブソン青眼の573俳句(現代俳句協会賞)、林桂の素数俳句「鬣」98号
➂栗林浩「雑感――現代俳句3人3句選アンケート」(未来の俳句は?)「現代俳句」3月号