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2014年2月7日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年 歳旦帖 第五

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     夏木 久(「連衆」「豈」)

神子に御意と応へ聖夜の九十九折
書初は遠い喇叭の水辺かな
風呂敷をまた靡かせて初厠
戸袋のその絶海を宝船

2014年1月31日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年 歳旦帖 第四

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   近 恵(1964年生。「炎環」「豆の木」同人。合同句集「きざし」)
餅がいま去年の空気を吐いて果つ
松過ぎの風のあたっている目玉
正月はここで終わっているようだ

   黄土眠兎(「鷹」「里」)
国生みの入江の闇や淑気満つ
若水を汲んで王家の暦師かな
タカラヅカ百年女礼者なり

   堀田季何(「澤」「吟遊」)
敏雄忌は平時か臭き花を嗅ぐ
鮟鱇や亡びし弊(へい)に凌遅刑
     ロシア極東最東部の先住民族
毛皮着て毛皮に寝るやユピクの子
蛇眠りヘブライ人(びと)も眠りをり
遺伝子の複製されて去年今年
爆ぜたてのものばかりなり去年今年
衛星や敵見えずして初御空
初弥撒に白と黒ありまづは白
死顔の頬の弾力鏡餅

   小澤麻結(「知音」同人)
ほのぼのと玉露に沈み結昆布
手袋赤ゴールテープを今放ち
初旅や呪文の如きチェティナドゥ

   栗山 心(「都市」同人)
読初や煽りのうまきインタビュー
四日はやドームへ向かふ人の波
ロープへと伸ばしたる手や淑気満つ
  棚橋弘至選手
新春のリングに愛を叫びけり

   大井恒行
水の火を祀る火の水火の鶴に
歳旦の雪の華こそ骨のいろ
喰うて寝て老い皺の寒さかな


     小林苑を
紅白消し大つごもりの鎮まれり
蛇口から水がじやあじやあ去年今年
はつゆめにふれやうとしてふれられず
松飾り訳詞の歌を口づさむ
人日のまるまるとした赤ん坊



  飯田冬眞(「豈」「未来図」)
靴べらは柱の真中淑気満つ
コメントのなき賀状だけ寄せておく
スクリーンに完の一字や女正月


2014年1月24日金曜日

【俳句作品】  平成二十六年 歳旦帖 第三

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     小野裕三(「海程」「豆の木」所属)
覗かれぬものとして穴ある師走
年守る湾ふかぶかと灯と人と
初富士へ寄りつ戻りつ吾子と吾子


     中村猛虎(1961年兵庫県生まれ。「姫路風羅堂第12世」現代俳句協会会員。)
レノンの忌最近空を見上げてますか
遊廓の投げやりな手の暖かし
冬の田の土塊ゴロン爺さんゴロン
不と思と議切れば海鼠の如くなる
緩慢に死にゆく寒夜の受精卵
独語辞書インクの匂いのして真冬
深夜バスナイフ片手に乗る聖夜

     竹岡一郎(「鷹」同人)
参賀了へ九段北へと急ぎけり
愛国者賀状に禁句光らしめ
木剣に凹みあまたや初稽古

     小鳥遊 栄樹 (「若太陽」「ふらここ」)
初夢の海面に星触れる音
初詣手を繋げば手の甲寒し
空澄むや賀状に馬のようなもの

     林雅樹(「澤」同人)
光漏れ雨戸の板や大晦日
ピアス連なる耳にイヤホン初詣
親真つ青女礼者に抱きつけば




2014年1月17日金曜日

【俳句作品】  平成二十六年 歳旦帖 第二

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        中山奈々(「百鳥」「里」「くまねこ」)
去年今年ボス猿二回目の家出
新月の新年ボスの名はベンツ
ボス猿のなき山姫始めのびのび
猿人気ランキングあり福寿草
歯固めのクッキーやボス猿模して

        小林千史
漆黒の箸墓淑気たてゐたる
火球の音聞いてしまひし二日かな
おさがりの中をひたすらあるくとき

        しなだしん(「青山」)
東京のしづかなあした初昔
朝市の出口に雪の舞ひはじむ
晴れてきて冬の鷗の腹腹腹

     下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)
おめかしをしてはづかしく冬の木に
熊出でしことを知りつつ初箒
火を焚いて辻に餅搗はじまりぬ

     依光正樹(「クンツァイト」「屋根」)
ひとつちがふ毛色の紙や賀状来る
この家のどこに何置く鏡餅
淡くして火色の欲しき飾かな

     依光陽子(「クンツァイト」「ku+」「屋根」)
去年今年貫く音や洗濯機
盤上に去年の棋譜あり美しき
日当らぬところの光狂ひ花

     山田露結(「銀化」)
箸置にして楪の葉の厚み
手招きの映つてゐたる初鏡
餅花や暗く明るく日の過ぎて

     池田瑠那(「澤」同人/俳人協会幹事)
去年今年人体貫ける電磁波よ
大気圏外よりツイッターにて御慶
月面の山河不易や年あらた

     佐川盟子
歌かるた二人遊びのふたりかな
初みくじ恋愛は「あきらめなさい」
松の内ブックポストへ返さねば

     望月士郎
吹き出しの中に入りたる御慶かな
唇に花弁雪やたぶららさ
冬の象冬の輪郭象れり

     早瀬恵子(「豈」同人)
永き代のつるかめたかは揃い踏む
正月三日ほれぼれ御座す三ッ日月
明けましてフォーチュンクッキーの重箱

     山本敏倖(「豈」「山河」)
新年の穴のごとくに黒き絵馬
変わらないふつうの朝日を初日とす
初夢や修正液を二度使う

     関悦史
開戦前最後の正月かもしれぬ
三が日天行も吾もただ無言
ビール缶股にねぢ込まれ銅像少女五日

     小久保佳世子(「街」同人)
初夢の途中軍靴の響きあり
門松の間に立つてゐる二人
笑つてゐるやうな地獄絵初鴉

      堀本裕樹(「梓」同人)
行く年のウッドベースの響かな
初富士に詰め寄られたる志
山頂に鴉群れ舞ふ淑気かな

      北川美美(「豈」「面」)
牛たちは藁を寝床に御正月
窓秋忌箸置きに置く箸白し
一月やビル二階より馬の尻

      柴田千晶(「街」同人)
初夢の缶詰どれも獏印
初御空吊られてみたき朱の鉤(フック)
初茜奴隷船の待つ港

     藤田るり子(「秋麗」)
二日目の雑煮は母の郷の味
初稽古譜面に書き足す感嘆符
ビル裏の祠拝して初仕事

     山田耕司(句集『大風呂敷』所属「円錐」「ku+」)
水仙や顔より出づる舌濡れて
あけぼのの他人の下駄なる温さかな
慶春のおが屑のその手さぐりの

     小津夜景
初東雲むなしく紫痕かかりをり
なんぞ死のちから群れゐる初東雲
のめりこむ陽も斜めなり初東雲



2014年1月10日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年歳旦帖 第一


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     池田澄子
皆様に賀正賀正と書き送りぬ
長生きを笑い嘆きに切山椒
大寒やたのしい我が家から出ない

     筑紫磐井
  歳末
シナトラが切なく甘くクリスマス
  歳旦
紅白の昭和してゐる行年来年(こぞことし)
新年に死ぬ人もあり星森々

     曾根 毅(「LOTUS」同人)
昼すぎの屠蘇をこぼしてしまいけり
初明り翼を持たぬ者として
行く先を問われておれり初詣

     網野月を(「水明」「面」「鳥羽谷」所属・「Haiquology」代表)
短日やto do listはみ出して
短日のせわしく動く匠の手
そのビルの影へ陽の入る短日の
高架下の造花のサクラ討入り日
初冠雪御山は見ても登っても
初夢や三打数四安打の男
むらさきは純日本製年酒酌む

     杉山久子(「藍生」)
煤逃の猫をかもうてをるばかり
石鹸に長き歯型や嫁が君
初電車盲導犬と隣り合ふ

     藤田踏青
クリオネと共に眠らん結氷期
凍てついたフロントガラス ドイツ観念論
冬の落丁か 動かぬ鴉

     福永法弘(「天為」同人、「石童庵」庵主、俳人協会理事)
初夢や世界遺産となる俳句
五七五より淑気てふもの
鹿島立つ馬は勢ひの嘶きに

     もてきまり(「らん」同人)
求不得苦(ぐふとくく)欲望かじる嫁が君
群青の筆圧泉下より賀状
ぽつぺん吹くをチューブ検索短ンと鳴く

     木村オサム(「玄鳥」)
杵先に一片の空餅をつく
年かはるアインシュタインの舌のごと
水牛の夢の反芻初明り

     ふけとしこ
年改まる赤き実に赤き艶
ひらひらと蛾よお降りのありさうな
冬三日月こをろこをろと海に島

     小早川忠義(「童子」会員・「あすてりずむ」)
面影にいたづら坊主せつきぞろ
来ぬ客や御用納めとお見受けし
肩肘張り午前零時の初商

     陽 美保子(「泉」同人)
人影に遮られたる十二月
蓋ものも蓋なきものもお正月
炉話の武井・樋口家ゆかりなし

     西村麒麟
見てゐても楽しきものにおでんかな
怠けるを貫きゐたり冬ごもり
働かず餅焼く事をしてゐたし
冬ごもりたまに句会の誘ひあり
人よりも鶉が多し冬ごもり

     内村恭子(「天為」同人)
太箸の白々ありし夜明けかな
太平洋まつすぐに行く大旦
元朝の羽根のばしたる鳥の群れ

     仙田洋子
煤逃といふ極楽をけふもまた
煤逃のいつそキリマンジャロまでも
しらとりの流れてゆくや年の暮
初明り死にたての死者手を挙げよ

     前北かおる(「夏潮」)
失すまじく赤子の心明の春
授くべき名のととのうて明の春
名にし負ふ果報こそあれ明の春

     岬 光世(「クンツァイト」・「翡翠」)
書初の始めの一字おほき過ぎ
追羽子や足袋の小鉤に皺寄せて
してみたき恋の札取る歌かるた

     月野ぽぽな(「海程」同人)
一角獣めくビルディング初茜
人日の人連れてゆくエレベーター
まだ恋を知らぬてのひら手毬つく

     水岩 瞳
案ずるや国の行く末去年今年
はつはるの網代方盆朱色かな
春着きて笑ふ歯脱けの少女われ