2014年1月17日金曜日

【俳句作品】  平成二十六年 歳旦帖 第二

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        中山奈々(「百鳥」「里」「くまねこ」)
去年今年ボス猿二回目の家出
新月の新年ボスの名はベンツ
ボス猿のなき山姫始めのびのび
猿人気ランキングあり福寿草
歯固めのクッキーやボス猿模して

        小林千史
漆黒の箸墓淑気たてゐたる
火球の音聞いてしまひし二日かな
おさがりの中をひたすらあるくとき

        しなだしん(「青山」)
東京のしづかなあした初昔
朝市の出口に雪の舞ひはじむ
晴れてきて冬の鷗の腹腹腹

     下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)
おめかしをしてはづかしく冬の木に
熊出でしことを知りつつ初箒
火を焚いて辻に餅搗はじまりぬ

     依光正樹(「クンツァイト」「屋根」)
ひとつちがふ毛色の紙や賀状来る
この家のどこに何置く鏡餅
淡くして火色の欲しき飾かな

     依光陽子(「クンツァイト」「ku+」「屋根」)
去年今年貫く音や洗濯機
盤上に去年の棋譜あり美しき
日当らぬところの光狂ひ花

     山田露結(「銀化」)
箸置にして楪の葉の厚み
手招きの映つてゐたる初鏡
餅花や暗く明るく日の過ぎて

     池田瑠那(「澤」同人/俳人協会幹事)
去年今年人体貫ける電磁波よ
大気圏外よりツイッターにて御慶
月面の山河不易や年あらた

     佐川盟子
歌かるた二人遊びのふたりかな
初みくじ恋愛は「あきらめなさい」
松の内ブックポストへ返さねば

     望月士郎
吹き出しの中に入りたる御慶かな
唇に花弁雪やたぶららさ
冬の象冬の輪郭象れり

     早瀬恵子(「豈」同人)
永き代のつるかめたかは揃い踏む
正月三日ほれぼれ御座す三ッ日月
明けましてフォーチュンクッキーの重箱

     山本敏倖(「豈」「山河」)
新年の穴のごとくに黒き絵馬
変わらないふつうの朝日を初日とす
初夢や修正液を二度使う

     関悦史
開戦前最後の正月かもしれぬ
三が日天行も吾もただ無言
ビール缶股にねぢ込まれ銅像少女五日

     小久保佳世子(「街」同人)
初夢の途中軍靴の響きあり
門松の間に立つてゐる二人
笑つてゐるやうな地獄絵初鴉

      堀本裕樹(「梓」同人)
行く年のウッドベースの響かな
初富士に詰め寄られたる志
山頂に鴉群れ舞ふ淑気かな

      北川美美(「豈」「面」)
牛たちは藁を寝床に御正月
窓秋忌箸置きに置く箸白し
一月やビル二階より馬の尻

      柴田千晶(「街」同人)
初夢の缶詰どれも獏印
初御空吊られてみたき朱の鉤(フック)
初茜奴隷船の待つ港

     藤田るり子(「秋麗」)
二日目の雑煮は母の郷の味
初稽古譜面に書き足す感嘆符
ビル裏の祠拝して初仕事

     山田耕司(句集『大風呂敷』所属「円錐」「ku+」)
水仙や顔より出づる舌濡れて
あけぼのの他人の下駄なる温さかな
慶春のおが屑のその手さぐりの

     小津夜景
初東雲むなしく紫痕かかりをり
なんぞ死のちから群れゐる初東雲
のめりこむ陽も斜めなり初東雲



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