2014年1月31日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年 歳旦帖 第四

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   近 恵(1964年生。「炎環」「豆の木」同人。合同句集「きざし」)
餅がいま去年の空気を吐いて果つ
松過ぎの風のあたっている目玉
正月はここで終わっているようだ

   黄土眠兎(「鷹」「里」)
国生みの入江の闇や淑気満つ
若水を汲んで王家の暦師かな
タカラヅカ百年女礼者なり

   堀田季何(「澤」「吟遊」)
敏雄忌は平時か臭き花を嗅ぐ
鮟鱇や亡びし弊(へい)に凌遅刑
     ロシア極東最東部の先住民族
毛皮着て毛皮に寝るやユピクの子
蛇眠りヘブライ人(びと)も眠りをり
遺伝子の複製されて去年今年
爆ぜたてのものばかりなり去年今年
衛星や敵見えずして初御空
初弥撒に白と黒ありまづは白
死顔の頬の弾力鏡餅

   小澤麻結(「知音」同人)
ほのぼのと玉露に沈み結昆布
手袋赤ゴールテープを今放ち
初旅や呪文の如きチェティナドゥ

   栗山 心(「都市」同人)
読初や煽りのうまきインタビュー
四日はやドームへ向かふ人の波
ロープへと伸ばしたる手や淑気満つ
  棚橋弘至選手
新春のリングに愛を叫びけり

   大井恒行
水の火を祀る火の水火の鶴に
歳旦の雪の華こそ骨のいろ
喰うて寝て老い皺の寒さかな


     小林苑を
紅白消し大つごもりの鎮まれり
蛇口から水がじやあじやあ去年今年
はつゆめにふれやうとしてふれられず
松飾り訳詞の歌を口づさむ
人日のまるまるとした赤ん坊



  飯田冬眞(「豈」「未来図」)
靴べらは柱の真中淑気満つ
コメントのなき賀状だけ寄せておく
スクリーンに完の一字や女正月


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