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2014年4月18日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年 春興帖 第七


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   中山奈々(「百鳥」「里」「くまねこ」「手紙」)
春昼や風呂に下着の見当たらず
僕の髪が肩まで伸びて四月馬鹿
葉牡丹の茎立つ東京は遠き
いいとも!はみな春色のチェックシャツ

   大井恒行
咲きくるう万物を見し春みたび
春乱歩「椅子の中の恋!」ならん
つちふる曙 堕ちる冬衛の一脚よ


   北川美美(「豈」「面」)
花過ぎに男出てゆく家の門
赤ん坊三色すみれ握りしめ
白き黒き春山火事をいかんせん

2014年4月11日金曜日

【俳句作品】平成二十六年 春興帖 第六


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    池田瑠那(「澤」同人。俳人協会幹事。)
湧水のはつかに甘し山桜
パンケーキさと返したる桜かな
青年のギター激しや遅桜

     夏木久
春眠のあと3分をウルトラマン
ガンダムがじっと見送り鳥雲に
春愁ひアトムは仰ぐ北の空

     岡村知昭
チューリップ治安維持法よりピンク
チューリップ畑へ積もる祝詞かな
天真爛漫をチューリップへ詰める
チューリップ立つ涎掛けしなくても
寝小便かとチューリップ囃しけり

     小林苑を

礼拝の途中なのはな畑かな
犬ふぐり空を吸つたり吐いたりす
陽炎の母はうしろを向いたまま

     筑紫磐井
忌日より花咲く誕生日(バース・デイ)を泣く
愛うたふ愛なき人やすみれ草
  西村麒麟を祝う
こんな日に句集を祝う四月馬鹿




2014年4月4日金曜日

【俳句作品】平成二十六年 春興帖 第五

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     羽村 美和子(「豈」「WA」「連衆」同人)
鳥雲にポケット何だかさびしい
野火走るやがて逆巻くプロパガンダ
風のうた水のうた聞くみすゞの忌

     長嶺千晶(「晶」代表)
逝かしめし春万灯の金の雨
ゆくりなく潮筋重ね彼岸かな
兼好忌折々覗く古本屋

     望月士郎
命名の雨ものの芽に降りそそぐ
有史とは駱駝のまぶた春の塵
踝に見知らぬ町のひこばゆる

     音羽紅子(北見出身。童子会員、オホーツクの風土を詠みたいと俳誌「ゆきしづ                  く」を2013年にはじめる。)
名残雪青白くある夜明けかな
咽のまだひりひりとして春の風邪
早朝や雪解雫のまた凍り

     下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)
こゑは雀やはるけさの紀元節
街に園名残の雪に日のあたり
苗札に平仮名で書くふらんす語

     岬光世(「クンツァイト」「翡翠」)
この木ならかうしてすくふ涅槃雪
後にする講堂広し卒業す
音量の足りぬソプラノ春の庭

     依光正樹(「クンツァイト」主宰・「屋根」)
梅林にあつて遠くを見つめる目
たくさんの苗札が波白き波
草深く持ち歩くもの彼岸かな

     依光陽子(「クンツァイト」「ku+」「屋根」)
水を出て数分陸で公魚生く
野焼の火うつくしき詩を携へて
一行や白き椿に頭を低く

     岡田由季
目算で百匹ほどの蝌蚪群るる
ハ長調アスパラガスの頭を揃へ
磯巾着躁状態にあるらしき



2014年3月28日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年 春興帖 第四


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     小早川忠義(「童子」会員・「あすてりずむ」)
バンダナをあねさん被りよなぐもり
春雪やいで湯に男叫びあひ
鳥の巣や我が家に鬼門裏鬼門


     堀下翔(「里」「群青」)
落ちてきし羽のかたちに雪解くる
点字ブロック到る雪解の交差点
春寒し全一幕となる口伝
春寒し土もやよひの出土展
試奏よりはじまつてゐる卒業歌
卒業や画鋲覗けば顔うつる


     小野裕三(「海程」「豆の木」所属)
春楼に東京の水差し出しぬ
啓蟄やおのおの試す壁抜けの術
雪濁り北寮に窓窓窓窓



     佐藤りえ(「恒信風」)
盆の窪押されて春のこゑがでる
靴下を濡らしてきたる野遊びや
月代にものの芽生ふる指南かな
草餅や人の真似して生きてゐる
醒めるたび函あけてゐる春の夢



     水岩瞳
ゆっくりと咲いてゆっくり散る梅花
混沌はわたしの証春の泥
無常迅速なりからからと風車


     堀田季何
黄金の御空あり蛇穴を出づ
蛇穴を出づ己が身を舐めつくし
蛇穴を出づ種の滅び知らずして
蛇穴を出づ入りてまた出づるため


     林雅樹(「澤」)
真夜過ぎてホテルのロビー桃の花
花屑の溜まるやコインパーキング
突風に跳ねてぶらんこ鎖鳴る


     小久保佳世子
啓蟄の光る服着て工夫らは
春の昼役者は化粧して老けて
空席の前に置かれし桜餅


     島田牙城(「里」お世話係)
争点を雲と霞の界とす
本に天地くはへて遊び青き踏む
とはいへのとはは問はれじ鳥の恋


     仲 寒蝉
海市への船荷の袋人のかたち
日本語に聞こえアラブ語あたたかし
アイロンが船の形や涅槃西風



2014年3月21日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年 春興帖 第三

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     飯田冬眞(「豈」同人、「未来図」所属)
ふくらはぎ揉んでにこにこ紀元節
戦ひを忘れたる国雪中梅
起立礼遺族黙禱鳥雲に

     藤田踏青(「豈」「層雲自由律」「でんでん虫の会」)
春泥踏みしめ強情な転轍手
カクレンボウ 何ごともなく佐保姫と
吃水線のそこここで呟く流し雛
深爪に語りかけゆれる春灯
春寒をはみ出している無精髭
壬生狂言 蠢くものに救われて

     もてきまり(「らん」同人)
鬱ボタン一つはずして春衣
水搔きで鬱出てみればなほ朧
Que sera sera自我とからし菜炒めけり

     関根誠子
知らぬ事はすぐに信じて桃の花
風花や続いて済ます七七日
飛花落花犬の横顔が笑って

     西村麒麟
春雪の神奈川を出る電車かな
羊羹を語つて楽し凧市に
埼玉へ進む電車の長閑さよ
川越の春や大きな玉こんにやく
ぜんまいののの字の事はもういいや

     福田葉子
魂一つ連れて重たし鳥雲に
沖遥か未生の町立つ貝櫓
夕されば亀鳴く丹後思えらく

     花尻万博
現し世の道の短さ蓬摘む
畦焼や四方へ昏れる、昔情死
碑の余白 蓬摘む鬼入れ光る
畦焼を冷ます遠くの水面かな
鬼の子と思ふ蓬に遊びもして

     竹岡一郎(「鷹」同人)
嫁入の峠あかるむ蕨かな
上方の雛運んで津軽まで
春祭玉乗狐土人形



2014年3月14日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年 春興帖 第二

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     小鳥遊 栄樹(「若太陽」「ふらここ」「立体交差」「里」「群青」)
春帽をかぶつて寡黙なる男
靴紐に雑草植うごと春散歩
春ショールふわり靴紐ほどけたる
皆同じ顔の絵画や春浅し
春の夜の指先に触る白熱灯
あんぱんをふつさりと割る春浅し
ドーナツを抜け出して春満月に

     杉山久子
ヒヤシンスポットからつぽ風光る
生前も死後も尖りて葦の角
一日のつひのひかりのはこべかな

     木村オサム(「玄鳥」)
己が背の見えてくるまで青き踏む
囀の上のコサックダンス隊
曖昧なほうの陽炎選びをり

     中西夕紀
駅降りて左右に大寺うすごほり
その墓の椿は蕾また来たし
金蘭や逢ひたき人に遭ひしごと

     ふけとしこ
暮遅し大きな靴が前に立ち
生前も死後も巣箱の傾ぎたる
につぽんに定型の詩クロッカス

     堀本 吟
4Bに替えてぼかして春の雪
卒業や木の股にまたがりし子も
啓蟄やメダル重たきハイティーン
志賀直哉旧居モダンや芽の馬酔木
ふれてはぽろりまたぽろりまたもものはな
人生の老いてもくぐる椿闇

     陽 美保子(「泉」同人)
     回想
胎の子に雪解雫の音あまた
胎動のかくも蛙の目借時
生まれくる四肢こそばゆし春あられ

     前北かおる
鳥翔る春野を一人い行くかな
はや水に洗はれてをり春の草
シャッターを切るたび増ゆる梅の花

     早瀬恵子(「豈」同人 )
詞梨勒(かりろく)の春の柱に夢ひと夜
乳白色のフジタの変身ハル少女
縛られし娘の足からさくら咲く

     内村恭子(「天為」同人)
春の夢黄金郷(エルドラド)まであと少し
春昼や店先に売る摩利支天
界面活性剤泡立ちの良き雨水



2014年3月7日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年 春興帖 第一







     仙田洋子
鳥雲に第五福竜丸残し
   東日本大震災
春の海上履きのまま流されしか
ケンタッキーおじさん手持ち無沙汰春

     曾根 毅(「LOTUS」同人)
春昼や甲冑の肘見当たらず
水に棲むものの集まる日永かな
梅香る枝の先まで言葉めき

     中村猛虎(1961年兵庫県生まれ。「姫路風羅堂第12世」現代俳句協会会員。)
首抜けて雛に精子の飛びにけり
清明の刑務所の土柔らかく
春の闇深き所に死の匂い
輪ゴム跡手首に残る春の宵
良き漢は皆人のもの桜貝
桃缶や地球と繋がる足の裏
朧より折り鶴を出す人の妻

     栗山 心(「都市」同人)
初午や祠の鍵は針金ぞ
戒名に華といふ文字涅槃寺
剃刀の産毛滑らすかの子の忌

     月野ぽぽな(「海程」同人)
立春の枝を大きく蹴って鳥
この星の銃口の数冴え返る
体より腕おもたき春の雷

     網野月を(「水明」「面」「鳥羽谷」所属・「Haiquology」代表)
二筋の飾り包丁蒸鰈
「蒸鰈」酒より句作に浸る日々
蒸鰈俳句談義がしらけても
けり付けて俳句にしても蒸鰈
美骨かなサインコサイン蒸鰈
蒸鰈焼けばぼやける水平線

     山田露結(「銀化」)
椿咲き継ぐやうに人咲き継いで
冴えかへる地球が青いことなんて
未来さておき菜の花のからし和へ

     福永法弘(「天為」同人、「石童庵」庵主、俳人協会理事)
初午や肉のスエヒロ倒産す
春しぐれ海老の背腸を抜きをれば
花菜漬酔ゐにまされる幸などなし