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2014年7月18日金曜日

平成二十六年 花鳥篇 第八 (最終回)




     仲 寒蝉
をんどりの尾をひきずるや竹の秋
神々の混み合つてゐる青嵐
レーガンの時代あれからかたつむり

     しなだしん(「青山」)
軽く手を触れて下さい目借時
おしぼりは真白き獣冷し酒
念力のやうな音して冷蔵庫
行水のをんなの黒く大きな目
ルイ十四世のやうな男のゐる露台
マンゴーが手に収まれば沖を見る
活きのよきをんな西日に置いておく

     堀本 吟
愛てなに?梅雨の茸のじわじわと 
万緑やいきなり刺してきたりけり
椎の花無頼というに世も過ぎて
ほそき尾のこころぼそさや蜥蜴ゆく
瑠璃は識る音楽は識る蜥蜴の世

     筑紫磐井
カルピスをこぼして飲んで幼な恋
  玉藻1000号記念祝賀会
諸兄諸姉祝辞は長し五月雨
  鷹50周年記念祝賀
法王なりたし夏至の魔女の夜
  俳句四季七夕会にて
七夕短冊 嘘がばれませんように



2014年7月11日金曜日

平成二十六年 花鳥篇 第七




黒岩徳将(俳句集団「いつき組」所属、第五回石田波郷新人賞奨励賞受賞)
萵苣はがす紐解くやうに盗むやうに
鳥雲に入る風呂敷の波頭
すかんぽをあいつが噛んだから噛んだ
さかむけは生者にありて著莪の花
閉ざさるる視聴覚室青葉騒
手のひらに風の逃げ道聖五月
ハンモック口より英語飛び出して


沙汰柳蛮辞郎
鴨川や裸の天日干し二つ
初めてのスターバックス竹の秋
饅頭は割れば別物春愁い
蛞蝓の夜点滴はまだ半分
思うほど眼球軟らかく春雷


北川美美
難しきことをやさしく文字摺草
妹運ぶ姉いきいきとチューリップ
蝙蝠もコンクリートの家を継ぎ
太古より鳥になりたき人多し



2014年7月4日金曜日

平成二十六年 花鳥篇 第六


澤田和弥
紫煙ほどもなき真夏の雲がある
くちなはやバーテンダーの唇に傷
茗荷の子男子ちんちんもて男子
葬式は派手にやるべし扇風機
黄金や関東平野に生ビール
朱夏の首都ごらんバビロニアが近い
早く早く螢に殺されてしまふよ


望月士郎(「海程」所属)
花の夜の象のつづきはまた明日
花月夜魚屋さんの手に鱗
駅を出る桜ふるふる献血す


飯田冬眞 
石段に佇む杖や夕桜
極太の闇束ねたる桜かな
のけ反りて笑ふ汝よ桜の夜
鷭の子を数へるたびに風が吹く
夏鴨の乱るる水輪倦怠期
不如帰かつて詩人は血を吐きて
うたかたの家に声増え燕の子


栗山 心(「都市」同人)
スムージーに絞り入れよと夏の月
人形に睫毛埋め込む夏至の夜
サボテンの花や母にも少女の日


長嶺千晶
水平に塩辛蜻蛉水平に
横顔のアイスクリーム空を見ず
語り合ひ笑ひ緑蔭出でゆかず 


岡村知昭
名乗り出るまで白鷺は来てくれぬ
青鷺を訃報のごとく出迎える
伝書鳩使わずじまい青田風


池田瑠那(「澤」同人、俳人協会幹事)
春愁や機械のモグラ打てばなほ
銀の風船すこしく未来映しをり
サイフォンに珈琲沸きぬ青嵐


近恵(1964年生まれ。青森県出身。2007年2月俳句始めました。「炎環」同人「豆の木」メンバー。2013年第31回現代俳句新人賞受賞。 合同句集「きざし」。)
神様へ鈴をならして桜降る 
首を伸ばして八重桜 八重桜
うぐいすの意のままに森開かれて


太田うさぎ
象の目の象に埋もるる虚子忌かな
町の名のうつろふ桜満ちにけり
竹夫人朝はソファーに戻さるる
見劣りのする白靴で来てしまふ
すててこが好きで加賀まりこは苦手



2014年6月27日金曜日

平成二十六年 花鳥篇 第五



     水岩 瞳
今年また旬の桜と旬の吾
桜満ち花神が覗き込む世間
桜とはあざとい花よ風邪心地

     辻本鷹之(「銀化」会員)
六月のボタンで開く電車かな
講堂に祝ひの幕やつばくらめ
日本海おだやかにあり昼寝覚
孫とゐて氷菓の列に並びけり
箱庭や盆の漆の海ふかく

     佐藤りえ
夏暁や月へ帰るといふ寝言
今やらなくていいことばかり五月闇
氷水とけておいしい水になる
筋肉に呼びかけ雲の峰高し
昼寝から覚めて真青の国へ行く

     寺田人(「H2O」「ふらここ」)
さあ筆を取れ南風を色付けろ
海水が甘くなるまでラムネ注ぐ
万緑に憩う缶コーヒー二本
おもいびといるのいないの蚊喰鳥
初音ミクのアナウンスする熱帯夜
眠剤の世界になってきた薄暑
ビー玉の墓場となっている泉

     堀田季何
『列子』説符第八第二十九章を読みしかど
蚊のために神は吾等を造られき
芥川より存へて夏の海
何らかの肉らしきもの冷蔵庫
バナナ責むナイフとフォーク駆使しつつ
蛇衣を脱ぐダンディズム捨てしのち

     木田智美(関西俳句会「ふらここ」)
マナティのかたちの雲や更衣
みんな変わっちゃったね夏帽子に影
ソーダ水かき混ぜ珍しい魚
夏野菜失恋できる人になれ
百日紅ばいばいたまには帰っておいで

     阿久津統子
地球儀の日本は無傷夏終る
桜桃忌だから真面目に呼吸して
みんみんの内側に熱みんな恋
わたしに善悪を問うな蝉時雨

     中山奈々(「百鳥」「里」)
種半分見えたる枇杷の熟れにけり
塀に色預ける雨上がりの枇杷
枇杷食ぶや境内は廃材置き場
休憩の易者バナナを剥いてをり
枇杷熟るる夜にでつぱつてゐる鉄柵


     野住朋可
ブラウスにしみが小さく麦の秋
葉脈のとおり病葉壊れけり
朴の花咲いて猫背の二回鳴る

     栢原悠樹
狩人の墓は根元に風薫る
ゆっくりとニュースは進み夏の昼
童謡は窓超えて来て大南風
Twitter閉じて夏野を駆け巡る

     仮屋賢一(関西俳句会「ふらここ」代表)
裏表定まるまへの蝿叩
まだ怖き道をゆくなり蛍狩
冷房や生徒つぎつぎ指して訊く


2014年6月20日金曜日

【俳句作品】  平成二十六年 花鳥篇 第四




     山本たくや(「船団」「ふらここ」所属)
ドライブの窓全開に薫る風
こっちだよ手をこまねいている若布
万緑の中でポキバキ鳴らす骨
致死量を超えてピーマン肉詰めに
マニュアルに沿ってリンゴ喰む白熊

     川嶋ぱんだ(2013年12月末に関西俳句会「ふらここ」に入会。)
黒南風に追われて神戸港を去る
旧の宿恵みの黴とそうでない黴
横道に一本いけば蝉の声
粉チーズ夏の温室的思考
残月に軸足置いて夏渡り
弱冷車に女の髪の淋しけり
傘閉じて港が見えるねホトトギス

     浅津大雅
天牛やトイレ案内板に点字
吹いても吹いても頁にしがみつく糠蚊
かはほりや絹ごし豆腐派でありぬ
新樹光裏口入学のはなし
さへずりや糺の森の土やはく
初夏の怪物映画傑作選
膨らめば国となるなり稲の花

     羽村 美和子(「豈」「WA」「連衆」同人)
夏蝶湧きふと式神のひとりふたり
烏瓜の花秘密をさてどうしょう
白雨です激しいプルトニウムです

     竹岡一郎(「鷹」同人)
五月雨の琴百年の柔き指
短夜の短き舌を愛しけり
玉葱を剝けば記憶の無くなりぬ

     夏木 久
阿弗利加の痒いところに蚊遣香
五月雨の狙ふゴールの右の隅
紫陽花の乾けば謀反はじまれり

     西村麒麟
薔薇の名を残念なほど忘れけり
濃厚な薔薇ことごとくドイツ産
赤黒く大人の薔薇でありにけり


     内田麻衣子(「野の会」同人)
摘み草や悋気な猫はまるく寝る
太陽のたまご抱えてする午睡
逐電インコの遠き裏声夏野原
青物屋赤べら泳ぐサッシ裏
みづいろに燃えよ静脈いなびかり

     小久保佳世子(「街」同人)
梅雨鴉こはいこはいと鳴いてゐる
ざりがにの取引眼鏡の子が泣けり
さみだれや眼鏡かけると眼が小さし




2014年6月13日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年 花鳥篇 第三









   平成二十六年 花鳥篇 第三

     花尻万博
母の家造花に満ちて若葉雨
薇を入れてすまし見飽きたり
定型の言葉透けつつ薊かな

     下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)
羽抜鳥何を怖るることもなく
紫陽花のきのふの色を水の上
夏蝶や一枚の葉の朽ちるまで

     岬光世 (「クンツァイト」「翡翠」)
どこからが風や莟や花みづき
葉桜や上人像の名を忘れ
夏きざす大樹は雲を歩かせて

     依光正樹 (「クンツァイト」主宰・「屋根」)
どこまでもいけると思ふ著莪の花
街に道寺に径や花樒
ひらきては潮を臨むひからかさ

     依光陽子 (「クンツァイト」「ku+」「屋根」)
抱卵期影のひとつとなりて啼く
借景として姫著莪の喪の如く
鈴蘭や硝子隔てて内と外に

     藤田踏青
類語を嫌いすねるばかりの花筏
逆走の片眼に荒野と花菜畑
寂光土にはいつも山鳩が
逆縁なれば時鳥など知らず
車椅子にも九尺藤の乱れ文字

     林雅樹(「澤」)
新樹風に揺れ駅前のロータリー
夢遊病者新樹に呼ばれ木戸を出づ
栗の花匂ふ通りに出て叫ぶ

     中西夕紀
東(ひんがし)の月まだ淡し生ビール
神輿来る暗渠に橋の名を遺し
水貝を出せう貧交に淡交に

     津髙里永子
青芝やザッケローニと母言へて
駅薄暑犬の里親募る声
チューブ入り病院食や青葉冷 

山田露結(「銀化」)
紫陽花のこれは造花でこれも造花
リア充とは空しづかなる罌粟の花
命などかけてはならぬ冷奴

     小林苑を(1949年東京生まれ。「里」「月天」「百句会」「塵風」所属。句集『点る』2010年上梓。)
大南風姿の見えぬものばかり
捨て鉢な金魚尾鰭を叩きつけ
黙祷をしてその後の海開き

2014年6月6日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年 花鳥篇 第二


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   前北かおる(「夏潮」)
百合の木の花おのづから仰がれて
葉桜の艶消しあへぬ日中かな
三階の茂るクウェート大使館

   山本敏倖(一九四六年生「豈」「山河」所属)
春惜しむあきらめないという鋏
仏への道筋にある五月闇
てっぺんに緋鯉の来てる五重塔
濃紫陽花不完全燃焼のまま
防人の系譜にからむ積乱雲

   原雅子 (「梟」)同人
百千鳥また水道が出しつぱなし
忙しさうな仏の千手昼蛙
鶏のそこら歩きや雪解風 

   木村オサム(「玄鳥」)
反政府集会場の羽抜鶏
蟻塚に歌いかけてるジョンレノン
内乱を抜けてパセリを添えたがる

   早瀬恵子(「豈」同人 )
人来鳥とんで人間色の泡
花をたがえず飾り窓なるおんないて
斜に構えたる歌詠み鳥のあざやかや

   小野裕三(「海程」「豆の木」所属)
春眠の奥から剥がしやすい人
日本の顔犇めいてご開帳
お菓子工場きらりと弾む夏の川

   陽 美保子(「泉」同人)
六人に寿司六十貫八重桜
微塵子の遊ぶ八十八夜かな
蛸壺の蛸の片目に睨まるる

   花尻万博
母の家造花に満ちて若葉雨
薇を入れてすまし見飽きたり
定型の言葉透けつつ薊かな

   仙田洋子
永眠や青葉若葉のひるがへり
死顔へ捧げて白きカーネーション
新樹光死顔を見し眼にも
告別は定家葛の匂ふころ
 <九十の恋かや白き曼珠沙華 文挟夫佐恵>を思ひて
百歳の恋かなはざり百合真白
螢火と螢火終にふれあはず
バルテュスの少女の仰臥青葉冷



2014年5月30日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年花鳥篇 第一


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     曾根 毅(「LOTUS」同人)
たらたらと卵の白味花の昼
夕永し桜の房を弄び
夕ぐれの花に纏わる音一つ

     福永法弘(「天為」同人、「石童庵」庵主、俳人協会理事)
をさめ雛しるしありたるごと汚れ
元服の十五がかなし武者飾
七夕のおもたき筆の止まりがち

     杉山久子
桜蘂降る日さくさく鳩サブレー
花冷の地獄絵に鳥らしきもの
静脈のあをき道すぢ時鳥

     小澤麻結(「知音」同人)
まぼろしの如喪の列花の雲
桜蘂降るや言葉を待ちをれば
老鶯の死者喜ばせゐたるかな

     中村猛虎(1961年兵庫県生まれ。「姫路風羅堂第12世」現代俳句協会会員)
舳先よりゆっくり沈む花筏
桜湯やたまに腕組む距離のひと
飛花落花ピアスの穴の向こう側
花衣脱ぎてテロリストの死
花冷えの三面鏡に奴がいる
曾根崎の路地の奥より不如帰
告白の少し離れてほととぎす

     関根誠子(寒雷・炎環・や・つうの会所属)
梅古木男時女時の相似て来 
蝌蚪すみれ鶯の声は撮れないなあ
手に乗せて他生の縁の初蛙

     網野月を(「水明」「面」「鳥羽谷」所属。「Haiquology」代表。)
耳穴に鼻糞は無し若葉騒
死ぬ音を聞かせ母逝く若葉光
首筋に若葉疲れよ天女舞う

     ふけとしこ
湖までを木苺の花零しつつ
すかんぽを折つて道草完了す
しりとりの途切れすかんぽの萎れ

     もてきまり(らん同人)
鳴かぬ亀鞭もて責める老主宰
六道の角にセブンイレブン八重桜
攝津の帽子より生れて黒揚羽

     大井恒行
眼の端をぬらして芽吹く柳はも
菜の花や涙の鳥のウクライナ
敏雄句の戦塵訓話今朝の夏