2014年6月6日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年 花鳥篇 第二


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   前北かおる(「夏潮」)
百合の木の花おのづから仰がれて
葉桜の艶消しあへぬ日中かな
三階の茂るクウェート大使館

   山本敏倖(一九四六年生「豈」「山河」所属)
春惜しむあきらめないという鋏
仏への道筋にある五月闇
てっぺんに緋鯉の来てる五重塔
濃紫陽花不完全燃焼のまま
防人の系譜にからむ積乱雲

   原雅子 (「梟」)同人
百千鳥また水道が出しつぱなし
忙しさうな仏の千手昼蛙
鶏のそこら歩きや雪解風 

   木村オサム(「玄鳥」)
反政府集会場の羽抜鶏
蟻塚に歌いかけてるジョンレノン
内乱を抜けてパセリを添えたがる

   早瀬恵子(「豈」同人 )
人来鳥とんで人間色の泡
花をたがえず飾り窓なるおんないて
斜に構えたる歌詠み鳥のあざやかや

   小野裕三(「海程」「豆の木」所属)
春眠の奥から剥がしやすい人
日本の顔犇めいてご開帳
お菓子工場きらりと弾む夏の川

   陽 美保子(「泉」同人)
六人に寿司六十貫八重桜
微塵子の遊ぶ八十八夜かな
蛸壺の蛸の片目に睨まるる

   花尻万博
母の家造花に満ちて若葉雨
薇を入れてすまし見飽きたり
定型の言葉透けつつ薊かな

   仙田洋子
永眠や青葉若葉のひるがへり
死顔へ捧げて白きカーネーション
新樹光死顔を見し眼にも
告別は定家葛の匂ふころ
 <九十の恋かや白き曼珠沙華 文挟夫佐恵>を思ひて
百歳の恋かなはざり百合真白
螢火と螢火終にふれあはず
バルテュスの少女の仰臥青葉冷



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