2014年7月4日金曜日

平成二十六年 花鳥篇 第六


澤田和弥
紫煙ほどもなき真夏の雲がある
くちなはやバーテンダーの唇に傷
茗荷の子男子ちんちんもて男子
葬式は派手にやるべし扇風機
黄金や関東平野に生ビール
朱夏の首都ごらんバビロニアが近い
早く早く螢に殺されてしまふよ


望月士郎(「海程」所属)
花の夜の象のつづきはまた明日
花月夜魚屋さんの手に鱗
駅を出る桜ふるふる献血す


飯田冬眞 
石段に佇む杖や夕桜
極太の闇束ねたる桜かな
のけ反りて笑ふ汝よ桜の夜
鷭の子を数へるたびに風が吹く
夏鴨の乱るる水輪倦怠期
不如帰かつて詩人は血を吐きて
うたかたの家に声増え燕の子


栗山 心(「都市」同人)
スムージーに絞り入れよと夏の月
人形に睫毛埋め込む夏至の夜
サボテンの花や母にも少女の日


長嶺千晶
水平に塩辛蜻蛉水平に
横顔のアイスクリーム空を見ず
語り合ひ笑ひ緑蔭出でゆかず 


岡村知昭
名乗り出るまで白鷺は来てくれぬ
青鷺を訃報のごとく出迎える
伝書鳩使わずじまい青田風


池田瑠那(「澤」同人、俳人協会幹事)
春愁や機械のモグラ打てばなほ
銀の風船すこしく未来映しをり
サイフォンに珈琲沸きぬ青嵐


近恵(1964年生まれ。青森県出身。2007年2月俳句始めました。「炎環」同人「豆の木」メンバー。2013年第31回現代俳句新人賞受賞。 合同句集「きざし」。)
神様へ鈴をならして桜降る 
首を伸ばして八重桜 八重桜
うぐいすの意のままに森開かれて


太田うさぎ
象の目の象に埋もるる虚子忌かな
町の名のうつろふ桜満ちにけり
竹夫人朝はソファーに戻さるる
見劣りのする白靴で来てしまふ
すててこが好きで加賀まりこは苦手



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