※画像をクリックすると大きくなります。
疲労の歌2 竹岡一郎
日本刀陳列室のはるうれひ裸女まどろみて唇ひらく観
諸人のマリアたらむと海女宣ればいそぎんちやくの音無き拍手
蕩児らが赫と厨を囲みゐてこの子兎の為に死なむか
陰饐えて祈る手のごと掲げらる回り舞台にトパーズ・不能者
医学部に父子二代献体せむと父笑めりわが袴着の折
ふるさとの風葬の坂急なれどすずしく過ぐる一輪車のひと
歌姫の最期縊死とも墜死とも降らみ降らずみ珠・髪・異言
青玉の蟬に残りし赤土を妃の悲恋凝りしと喰へり
真鍮の筒に水銀充たすべし握り締めれば月球はじけ
兵士来て焦げしピアノに指置けり忽ち放つ悍馬百頭
舐め嚙みて啄み銜え耀はせむ鱗・汝が呪詛・砂降る屋上
コルシカの香油一滴肋骨へ拭はば旅の支度整ふ
【作者紹介】
- 竹岡一郎(たけおか・いちろう)
昭和38年8月生れ。平成4年、俳句結社「鷹」入会。平成5年、鷹エッセイ賞。平成7年、鷹新人賞。同年、鷹同人。平成19年、鷹俳句賞。
平成21年、鷹月光集同人。著書 句集「蜂の巣マシンガン」(平成23年9月、ふらんす堂)。
0 件のコメント:
コメントを投稿