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疲労の歌1 竹岡一郎
はだら野に蛇行早めて阿呆船萌ゆる嬰児をあまた掬ひて
焼け残る本家客間の義肢に塗るペディキュアは銀・立春の瀧
紅玉の鏃放つに似て悪罵海鼠は腸を蚕は絹吐く
女優天晴娼妓たる過去暴かれて誉隠すが嗜みと答ふ
母の腹わが生れし痕白くありわが逝きし痕誰の肌に
穏やかに笑みてアイロンかくる汝ゆつくり焦げてわが背の皮
白日を父の眼と思へとや弥勒はるかに天を閉ざすや
受難劇果てたる大路夫婦者地割れを跳びて男は焼けつ
怒りの日血肉清らな青年は緋牡丹の株守りて果てぬ
隠身の真言唱へ杣二人かたみに愛しき名を呼ぶやうに
きぬぎぬの峰に猟銃谺なす額に触れれば明日受くる弾
ゴーレム! 恋文よろづ灰と為し煉り練りて汝、ゆりかもめ鳴け
【作者紹介】
- 竹岡一郎(たけおか・いちろう)
昭和38年8月生れ。平成4年、俳句結社「鷹」入会。平成5年、鷹エッセイ賞。平成7年、鷹新人賞。同年、鷹同人。平成19年、鷹俳句賞。
平成21年、鷹月光集同人。著書 句集「蜂の巣マシンガン」(平成23年9月、ふらんす堂)。
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