2013年11月29日金曜日

【俳句作品】 平成二十五年 冬興帖 第五


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     音羽紅子(「童子」会員)
炉の開きて煎餅みかん持ち来るよ
落葉掃くまだ金色でみづみづし
初雪のけはひますます強くなり


     佐川盟子
予約席は空席のままクリスマス
荒星や指の知りたる鼻の位置
脱ぎすてたブーツ戦死のごとくあり


     後藤貴子(「鬣(TATEGAMI)」)
玉霰ボーカロイドが叫ぶ愛
頬被りして笑い皺深うせり
グラウンドで踏みし朽葉のものもらい


     林雅樹(「澤」・共著『俳コレ』)
我を指す人差指や師走の街
鉄道の柵は枕木大根干す
雑誌自販機トタン囲みや冬の暮

 
    茅根知子
鉛筆の文字の太りて冬に入る
日の中にもう少しゐる毛糸編む
吐く息の流れてゆきし枯野原


     関根誠子(「寒雷」「炎環」「つうの会」同人誌「や」所属)
しづかな日差して時雨のこころざし
小春日や地球とび出す円周率
何の種だつたか生えて冬紅葉

 
    上田信治
あのあたり青から白へ冬空は
犬ほどの暖房器あり足許に
ながあしにゆく竹馬よ山は霧
見えてゐる夜のほんの一部の雪
冬の鳥食器がひとつふたつかな


     津髙里永子
わが樹海桂落葉の香に満つる
恋するか死ぬか炬燵の脚ぐらぐら
雪捨て場雪の重さに馴れてきし
灯ともして雪積む筒のごとき橋
藪柑子遺骨拾ひにゆく話


     小澤麻結(「知音」同人)
火も既に三和土の火鉢客待てり
棒を挿すのみの戸締り炭跳ねる
屋敷神いや白々と冬来る
かぶりつくカヂキバーガー冬うらら
アンパンマン今どの辺り小春空


     柴田千晶(「街」)
テーブルも椅子も人間冬館
夫役の男むじなに似てゐたる
石膏の乳房割れをる冬の庭




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