2026年6月26日金曜日

【鑑賞】豊里友行の俳句集の花めぐり52  『Goldfish’s Sigh』(杉田菜穂句集、2021年刊、Red Moon Press)を再読する。

  洋書コーナーにある海外向け絵葉書book風の装丁ですが、俳句と英訳がさらに格調高くエスコートしていて素敵な句集になっている。この句集の装丁が、杉田菜穂俳句世界へいざなってくれている。

 どの俳句にも人生スケッチブックに描かれた鮮やかな彩りを添えて弛みのない人生の弦を奏でる。

 私の俳句鑑賞をいれるのが、ヤボったいくらい。

 丁寧に生きている俳句の詠み方も私も見習いたい共鳴句が沢山ある。

 一句一句を絵画のように眺めて欲しい。

 俳句がしずかにモノやコトの本質(核心)に迫る。

 お見事お見事お見事。

 こんな句集が、欲しかった。

 句集の裾野を拡げる名作です。


畑の香残る菜の花スパゲッティ

 菜の花のスパゲッティをいただきます。そういえば、私は、昨年2025年に、俳人で写真家として沖縄戦の経路を追体験するため沖縄戦の凄惨さの縮図のような伊江島の取材に当たっていた。そこで出会った友人たちで伊江島の食事処でささやかな交流会をする。その際に伊江島の菜の花を磨り潰して練り込んだ蕎麦をいただいた。私の歩け歩け(ウォーキング)でもいつもの畑の菜の花がほのかに香るだが食したことはなかった。季節を彩る贅沢な食事の一品である。この杉田菜穂の俳句には、日常の俳句日誌が丁寧に織り込まれている。


黒板は深海の色風光る

 教室の黒板を深海の色と感受し、血潮を注ぎ込む。この句集の丁寧な詠みっぷりは、青春歌のように噛み締めて生きている杉田菜穂俳句のきらきら感が詰め込まれた人生の宝箱みたい。

 五感(視覚・聴覚・臭覚・味覚・触角)を丁寧に感受して詩眼で捉えて昇華されている。


タイヤにも春の空気を入れにけり

ごきぶりを捕らへし迄の一部始終

農学部棟まで続く春の泥

モネの色遣ひと思ふ夕焼雲

手袋を外して触るる樹氷かな


 自転車のタイヤでしょうか。柔らかな春を感受しながら春の空気をタイヤに入れる。

 かくかくしかじか俳句の清少納言は、油虫と格闘する学生らを遠巻きにその魔物のごときものを捕らえる一部始終を眺めておりました。

 農学部棟まで続くその道程には、春の泥があるというきらきら感を俳句に素直に綴る。

 夕焼雲の色遣いをモネの色と感受する感性に脱帽。

 五感を総動員して世界を甘受する。しかし樹氷を手で触るのは、危ないと感じる私はいくじのないものだ。

 輝ける日々の杉田菜穂俳句たちよ。俳句日記が人生を彩りながら豊かな人生をこれからも素敵な俳句で綴って欲しい。

 共鳴句を下記にいただきます。


幸せに気づく幸せさくらんぼ

どこまでも行ける切符や夏の旅

青春の真っ只中の夏帽子

嬉しくて嬉しくて踏む薄氷

ふらここにある思ひ出を揺らしけり

着ぶくれて地球大事にする話

クリスマスツリーの電気消す係

髪を切るのは風の盆終へてから

羅を着て朝までを語りけり

涼しさよポニーテールにしてよりの

虫籠がソファーになかつたら不在

涙出るほどよ姉妹の初笑

いつまでもどこまでも雪かと思ふ