句集の中には一ページを使って行間を空けたものや、ずらしてデザインのように書いたもの(岡田隆彦の詩集にもあった)上五の季語を揃えた連作があって興味深い。
また前作『地球のリレー』のテーマを引き継いで「リレー」というワードもいくつかの句に使われている。
豊里氏は沖縄の俳句作家で、カメラマンでもあり、多くの作品を発表されている。「月と太陽(てぃだ)」代表。
作品の中にはあちこちに沖縄の言葉も盛り込まれていて、風土性を強く感じる作家でもある。
感情を隠すマスクの捕虫網
いらぶーに国境線を任せてある
芽吹き出す蔓まで軍事要塞化
指紋まで解く人頭税の渦
黒潮を描く与那国の猫小(まやーぐわぁ)の尾
国境線を奏でるイラブチャーの虹
沖縄なので国境線の問題は生活と密着している。毎日を詠むことは歴史や政治に触れることにも繋がる。
こつこつと積もる清明の心音
(こつこつ24句より)
西瓜食う平和の種をぷぷぷぷぷ
天体が弾む赤ん坊(あかんぐゎ)オーケストラ
こつこつ24句の試みは面白かった。
ぷぷぷぷぷは種を吐くようなオノマトペが小気味いい。
赤ん坊(読み方が方言)
李白と杜甫を転がす月の盃
戦世の風化のなみだ 蝸牛
血液の宇宙よ「命の御祝(ぬちのぐすーじ)さびら」
様々な句で送り仮名をされていて、それが沖縄独特の読み方とわかる。
基地強化の整理縮小飛蝗とぶ
がちゃ
がちゃ
がちゃ 軍靴の雨音
がちゃ
がちゃ
分かち書き、更に改行もすることで前後左右にがちゃが響く。
死者も僕らも血潮のリレーよ赤ん坊(あかんぐゎ)
銀漢のこだま被弾した水筒
とんとんみーの太陽系を渡り切る
うりずんに愛されるための蕾よ
天体のエイサー太鼓の月のと太陽(てぃだ)
今の私たちの生き様を時代を超えて、宇宙間から俯瞰したような作品群は言霊となって唄い続けるだろう。