犬にもたれて
畦焼の煙が攻めてゐる一樹
みづら髪野火の塵から逃れきし
思ひ出し笑ひに開きふきのたう
野蒜引く列車の音を遠ざけて
犬にもたれて卒業の日の写真
・・・
白骨死体発見!
いや、びっくりした。しかし、綺麗な骨だ。骨格標本にできるな、これは。
物騒な話を始めたが、実はヤモリの骨。ほんの5センチ程の小さな物。屋上に重ねていた植木鉢を動かしたらその間から出てきたのだった。するすると這い込んでそのまま出られなくなったのだろう。即死ではないはずだ。じわじわと弱って死んでゆくのはどんな気持だろう。人間なら絶望的になりながら、助けを求めて声を上げたり、足掻いたりするだろうが……。
南の離島に泊まったことがあった。リゾートホテルだったが「ヤモリが出ますから驚かないで下さいね」とフロントで言われた。「多いの?」と訊いたら「まあそれなりに」という返事。あんまり嬉しいことではないが仕方がない。夜になるとお約束通りに彼らは出てきた。天井にも壁にもあの影がスルスルモゾモゾ……。洗面所に立っていたら、ビトッと頭へも落ちてきた。宿泊案内には書かれていない特別サービスである。
ベッドの上には落ちてこないでよ~と思いながら眠った。思いが通じたのかどうか、夜具へ落ちてくることはなかったが。
入日も星も鳥も美しい島だった。ヤモリのおまけも今は懐かしい。
(2021・4)
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