2013年2月8日金曜日

二十四節気論争(2)――日本気象協会と俳人の論争――/筑紫磐井編

2.「24節気アンケート」回答まとめ

平成24年7月27日から29日までの3日間、小諸市で「こもろ・日盛俳句祭」が開催された。この俳句祭の中で季語シンポジウム「私にとって季語とは パート2」が開かれている(パネラーは気象協会本部管理部の金丸努事業課長、俳人では本井英(司会)、片山由美子、櫂未知子、筑紫磐井)、今回のシンポジウムは気象協会が提案した24節気の見直しに関するものであった。このため主催者はシンポジウムに関連し「24節気アンケート」を実施した。以下「24節気アンケート」の全12問の回答を集計した結果を掲げることとする(問12「意見」の取りまとめは別に3.に掲げる)。
ここで使った資料は次の通りである。

資料①:こもろ・日盛俳句祭会場での「24節気アンケート」(取りまとめ:本井)
[シンポジウム会場でアンケート用紙により回答したもので64名の回答を得た。]

資料②:インターネット上の「24節気アンケート(最終集計)」(取りまとめ:筑紫)
[シンポジウムの2週間前から俳句系ブログ「詩客」「週刊俳句」「スピカ」等で募集してインターネットで回答を求めたもので8月31日までで120名の回答を得た。]

①と②は同じ質問により行われており同質のアンケートと見ることができるので、アンケート結果の概要を2つ対比してまとめて紹介する。

なお、回答者は、①では50~70代(74.8%)、②では40~60代(67.5%)が特に多くなっている(問1年齢関係)。

問2.24節気のうち、いくつ御存じでしたか。

気象協会が6月に上野公園で一般人99人を対象に実施したインタビューでは、「あなたは24節気をいくつ知っていますか」の問いに、
  •   24~19個    17人(17%)
  •   18~13個    16人(16%)
  •   12~7個    42人(42%)
  •   6~1個      21人(21%)
  •   全く知らない      3人(3%)
と回答があった。

今回我々のアンケート調査では、俳人を中心に行った調査であるため圧倒的に24節気の認知度が高かった。①では24個すべてを知っているのは40.6%、②では58.3%、気象協会インタビュー調査の最高レベル層(24~19個)は17%であったが、アンケートでは76.4/80.0%に達している(数値は①/②で比較し示した。以下同)し、気象協会インタビュー調査の最低レベル層(6~0個)は24%であったが、アンケートでは0%/0%であった。 

    
なお①における回答なしの数字は、母数には入れたが各項目では示していないので注意(以下の質問項目でも同様)。

問3.24節気を俳句の季語として使ったことがありますか。   

  • 「はい」が93.7%/90.8%
  • 「いいえ」が3.1%/9.2%

24節気の周知度は、実作に使う必要性からも高いものと推測された。

問4.現行の24節気を廃止する必要があると思いますか。

  •   「はい」が7.8%/1.7%
  •    「いいえ」が85.9%/98.3%
圧倒的に否定的回答が多かった。

問5.新しい季節の言葉を作った方がいいと思いますか。 

  • 「はい」が34.3%/40.8%
  • 「いいえ」が56.2%/59.2%
否定的意見が多かった。

問6.新しい季節の言葉ができたら季語として使いたいと思いますか。 


意外だったのは、
  • 「はい」が60.9/61.7%%
  • 「いいえ」20.3%/38.3%
出来上がった新しい季語には積極的な態度を持っていることであった。

問7.新しい季節の言葉はどのようにして作ればよいですか。

  • 「地域や古くから伝わる言葉を発掘する。」が50.0%/46.7%
  • 「優れた作家が作品で提案する。」が12.5%/27.5%
  • 「気象協会などが提案する。」が10.9%/5.0%
  • 「その他」が6.2%/20.8%であった。
気象協会などへの期待はあまり高くなかった。

問8.季語でありながら一般にあまり知られていない好きな季節の言葉を上げてください。

気象協会が季節のことばを募集する予定であるので、これに対応する季節のことばを俳人に問うこととした。①で23語、②では89語の回答があったが、回答を1つに限ったため多くの季語に分散してしまった。

複数回答は、夜の秋(6)、木の根明く(4)、行き合ひ(3)、虎が雨(3)、穀雨(3)、処暑(2)、白露(2)、新涼(2)、貝寄風(2)、白南風(2)、雲の峰(2)、花筏(2)、明易し(2)、昼寝(3尺寝)(2)、夏の果て(2)、桜隠し(2)、朝曇り(2)など。

問9.季節や気象に関心がありますか。 

  • 「はい」が96.8%/95.8%
  • 「いいえ」が0.0%/4.2%
気象協会が気象に関する普及啓蒙活動を進めるにあたって俳人は有力な集団であることが分かった。

問10.俳句を作るにあたって季節や気象の知識は必要ですか。 

  • 「はい」が95.3%/83.3%
  • 「いいえ」が1.6%/16.7%
上記質問と同様である。

問11.季節や気象の知識はどのように手に入れていますか。(複数回答可)

  • 「歳時記・俳句の書物」が95.3%/92.5%
  • 「季節・気象の啓蒙書」が31.2%/42.5%
  • 「新聞やテレビの番組」が54.6%/35.8%
  • 「その他」が4.7%/42.5%であった。
歳時記・俳句関係の書物への依存度が極めて高いことが分かった。

問12.24節気についてのお考えを自由にお書き下さい。

①では24件の書き入れ、②では75件の書き入れがあり、他のこの種のアンケートに比較して、回答者には能動的な意見の持ち主の多いことが分かる。問1.~11.の質問と異なり、回答者の回答根拠や、さらに派生する問題などについても意見が得られ、貴重な意見集となった。(集計結果は、3.3照のこと。)

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