2013年11月22日金曜日

【俳句作品】平成二十五年 冬興帖 第四

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      堀本 吟(「豈」「風来」「北の句会」)

右の目の衰へてをり月に雪

雲を抜け出て順はず月に雪

花もとぞ誘ふ声あり月に雪


      長嶺千晶

赤松のうろこ乾びて流行風邪

人間をやめて寝袋冴ゆるかな

絵双六またふりだしへもどりたる


      小林かんな

窓際は雑誌売場や小六月

今生のおでんのつゆを同じうす

置去りのレシートすでに枯葉めく


      羽村 美和子(「豈」「WA」「連衆」同人 近著『堕天使の羽』)

冬のバラ第六感を研ぎ澄ます

霧氷林鏡の国の扉が開き

原子炉を兄とも思う狐火


      網野月を(「水明」同人)

角瓶の刻みを撫でて優し冬

瓶中のカティーサークよ冬嵐

冬日中八重歯を隠す母若し

碧き目の嬰は碧きまま冬を越し

春と夏愛と生涯冬至る


      ふけとしこ

種を採る母在りし日のやうに採る

雨脚の見えてもきたるみそさざい

冬天やまばたきもせぬ眼鏡猿

      
      仙田洋子

     アウシュビッツ回想

ガス室の壁爪立ててみる寒さ

ガス室へ送られし日も寒かりしか

鉄条網アウシュビッツの永遠の冬


      小野裕三(「海程」「豆の木」所属)

冬空に鈍きものあり叩きけり

橋の冬音符のごとく人通う

冬の人美しきもの吐き出せり

      
      福田葉子

わが余命思えば雫る竜の玉

反魂の怒涛に生れし波の花

枯岬冥府の鳥翳濃かりける


      小久保佳世子(「街」同人)

寒月に狙はれてゐるかもしれず

くちびるに冷たし牛乳瓶の口

さやうならそれぞれの手に冬の薔薇


      岡村知昭

言い間違い恥ずかしがらず雪達磨

本山の目鼻なき雪達磨かな

雪達磨行き方知れず総本山



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