2025年10月24日金曜日

【連載通信】ほたる通信 Ⅲ(63)  ふけとしこ

 手数料

葛の花この道を馬往きし日も

秋霖やオセロゲームの黒に勝ち

鰯一盛りローズマリーは庭にある

糠雨や花野の先に地雷原

秋風が過ぎて両替手数料

・・・

 近所に小さな公園がある。

 桜が3本と楠が3本。ベンチが2脚、滑り台が一台。あとはささやかな花壇。芝生は芝が見えないほどにすっかりクローバーに覆われてしまっているが、花時の長いクローバーはとても綺麗でそれはそれで嬉しい。

 でも本当にそれだけである。

 何かの大きな切株が1つあるが、これはもう朽ちてゆくだけのような、そんな感じである。

 ある時、伸び伸びと青々と茂っていたその大きな楠が、葉刈りどころではなく、枝ごとバッサバッサと切り落とされた。

 剪定後の木をトルソーのようだと詠んでいる句を時々見かけるが、まさにその通りであった。申し訳程度に葉が残されていた。

 そして……。

 回復が何とも早かった。

 残された小枝はあっという間に枝になり、枝が見えない程に葉が覆った。

 木の周囲には太い走り根が多く出ていたが、その走り根からビュンビュンとでも言いたい勢いで蘖が噴き出した。隙間がない程に多くの。

 楠は強い木だとは聞いていたが、本当にそれを目の当たりにすることになった。3本の木のそれぞれが小さな林を(とは少しオーバーかも知れないが)従えているような雰囲気である。チビの私ならすっぽり隠れることができる木叢。公園課の管理になるのだろうが、木はすでに以前の大きさに戻っているし、周囲の走り根に伸び広がった若木達をどうするのだろうか。

 国道沿いに欅が2本あった。これは倒木の恐れがあるので伐る予定との予告を幹に巻き付けてあったが、その通りに昨年伐られた。

 各地で倒木による被害も出ているから、致し方がないのかも知れないが、この切株は既に朽ちてゆく様相。蘖は見られそうもない。

 地質の関係だろうか。それとも生命力の違いなのだろうか。

(2025・10)