2021年11月5日金曜日

第18回皐月句会(10月)[速報]

投句〆切10/11 (月) 

選句〆切10/21 (木) 


(5点句以上)

10点句

鳥渡る骨のかたちをして綿棒(望月士郎)

【評】綿棒で耳の軟骨をコリコリしてやろう…、空が軽く響くかも??…マンボー!──夏木久

【評】 手羽先を食べた時の骨の残骸を思い出しました。確かに綿棒みたいです。そう考えると〈鳥渡る〉が何だか面白く思えてきました。──篠崎央子


8点句

月光のくだけて水のいそがしく(小林かんな)

【評】 月光が真っ直ぐ差し込み、川などの水に当たって砕けた。実際は水が弾け散ったのだが、月光が砕けたように見えた。光を纏った水は眩しく、いそがしく感覚された。──山本敏倖


7点句

カンナ咲く明治の余熱積む煉瓦(飯田冬眞)


秋暑し展示ケースは指紋越し(内村恭子)


鰡が跳ね東京の川らしくなり(西村麒麟)

【評】 実景が手にとるようにわかる。東京らしいというところが心象の要素。──依光正樹

【評】 どこか東京以外の土地から転居してきたのだろうか。川の流れだけ見れば、何処とも大して変わらぬ水の流れだったのだろう。日々、川はただそこを流れていて、作者は日常を重ねてゆく。川をのんびり眺める余裕などなかったのかもしれない。ところがある日、ぴょんと鰡が跳ねた。それを見た瞬間、何でもない景色が作者の中で一変する。ああ「東京の川だ」と思ったのだ。川が東京の川らしくなったと書きながら、実は作者自身も東京の人らしくなってきたということ。私も東京の水辺に住んでいる。東京の川が好きだ。隅田川、荒川、中川、江戸川。掲句はどこかほのぼのとしていて、読み手をほっとさせてくれる、そんなひろやかな句だと思った。──依光陽子


6点句

長き首の上に置きたる秋の顔(水岩瞳)


5点句

木のかなた風のかなたの運動会(依光陽子)

【評】 「いつまでも運動会に行く途中」(故澤田和弥)を思い出して切ない。──渕上信子


(選評若干)

天狗茸ボルジアならばどう使ふ 3点 仲寒蟬

【評】 もちろん毒殺!──仙田洋子

【評】 ヴァレンティーノ公チェーザレ・ボルジアならどんな謀略に使うでしょうね。──佐藤りえ


捨案山子並びて何を語り合ふ 3点 松代忠博

【評】 案山子同士の会話には、雀も参加。そもそも、案山子が雀を追い払っているのを見たことがありません。──渕上信子


天網を揺すりて帰る燕かな 4点 仙田洋子

【評】 「揺する」という動詞の選び方は如何。という点だけ気になりますがそれはそうと、恢恢たる天網を、突破なり回避なりして帰って行くという見立ては妙想、と小膝を打ちました。燕はそう思ってもじつは天は遥かに広く寛闊で……というニュアンスまで含めて。──平野山斗士

【評】 「天網を揺すりて」がいいですね。スケールが大きくなりました。──水岩瞳


鰯雲ここにひとりの父もおらず 2点 松下カロ

【評】 不思議な言い回し。「ここにひとりも父おらず」ではない。父もいないんだから、母もいないのかもしれない。不思議な集まりだ。鰯雲もそうだ。父母なんてない、有象無象の集まりなのだ。──中山奈々


どの辺りとなく揺れ交はす花野かな 4点 小沢麻結

【評】 どの辺りとなくエロチックで諧謔もあり 叙景でもよいが心象描写として読む方が面白いかな などと揺れるアングルを読み手に提供する──真矢ひろみ


銀杏の道に母子の悲鳴かな 2点 平野山斗士

【評】 大変な事が起きたような、ただ臭い実を踏んだだけのような。──望月士郎


きちきちが左右へと開け景開け 1点 平野山斗士

【評】 土手を登るときのような、草を分けきちきちを飛び立たせ、登り切ったところで一気に視界のひろがる爽快さが想われました。──青木百舌鳥


実むらさき鈴木しづ子のそののちは 3点 仙田洋子

【評】 鈴木しづ子は戦後ダンサーや黒人兵との結婚を経て奔放な女性の境涯を詠んだ俳句で注目を浴びた。しかし、昭和27年第2句集『指環』を刊行直後、現在まで行方不明。存命なら102歳となっているはず。伝説の俳人の筆頭である。──筑紫磐井


みちのくの新米届く鴨肉と 2点 渡部有紀子

【評】 白く輝くお米を炊き、鴨は何に調理して頂くのだろうなど食欲が湧いてくる御句です──小沢麻結


千古らを白砂にして落とす秋 1点 山本敏倖

【評】 太古や永久を意味する語「千古」が複数形で用いられたことで不思議な印象が生じました。記紀の千五百秋(ちいおあき)を思いました。──妹尾健太郎


夢にまた同じ人ゐる女郎花 4点 真矢ひろみ

【評】 ちょっと怖い句。「同じ人」がどんな人なのか、もう少しわかると、更にいい句になるように思います。──仙田洋子


蜉蝣にされて誰かの記憶の川 3点 望月士郎

【評】 この書かれ方は主人公が神によって蜉蝣にされた、つまり生まれ変わらされたということであろうか。生まれ変わった先が誰かの「記憶の川」であったという。実に不思議な句だ。曖昧かつはかなげな川で作者の生まれ変わりの蜉蝣はただでさえ短い一生をどのように過ごすのだろうか。──仲寒蟬


画架立てて運動会を遠巻きに 2点 前北かおる

【評】 「遠巻きに」が面白かった。──仙田洋子

【評】 運動苦手の私には、運動会はいつまでも遠くにあって欲しかった。──渕上信子


秋草の天を指すもの垂るるもの 3点 渡部有紀子

【評】 いかにも秋草らしい。──仙田洋子


草は実に人間何にかはりゆく 3点 水岩瞳

【評】 本当に、何になるんでしょうねえ・・・──仙田洋子


秋の酒ふらりふらりと本棚へ 1点 西村麒麟

【評】 自宅でのひとり酒でしょうか。自分ならスマホやテレビになりそうなので、よほど読書を愛好する人なのだろうと思います。「ふらりふらり」という足取りも、人物が表れていて面白いと思いました。──前北かおる


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