2014年8月29日金曜日

平成二十六年夏興帖, 第一 (近恵・杉山久子・仙田洋子・曾根毅・福永法弘・堀田季何)



   近恵(1964年生まれ。青森県出身。2007年2月俳句始めました。「炎環」同人「豆の木」メンバー。 2013年第31回現代俳句新人賞受賞。 合同句集「きざし」。)
異界より声あじさいのくらがりに 
ひきがえる大気のひずみ膨らませ 
ほうたるがひとつ潜ってゆく裂け目

   杉山久子(藍生、いつき組、ku+)
泣かされし記憶水着に紅き花 
光追ふ飛魚の背につかまつて 
舟虫の失せれば滅ぶ都かな 

   仙田洋子
着陸の翼かがやく巴里祭 
海の日の海にふれたりはなれたり 
その先に真夏の海や滑走路 
空港で髪切つてゐる夏休 
離陸機の爆音原爆忌の爆音 
日盛や我に喰はるる豚あはれ 
蟻地獄蟻を引つぱりこむところ


   曾根毅(「LOTUS」同人)
酒場より緑夜に移る火照りかな 
安心(あんじん)や五山の大を見て帰り 
蝙蝠に見つめられたる木目かな


   福永法弘(天為同人、石童庵庵主、俳人協会理事)
窓小さく道民暮しマイマイ蛾 
蛾一枚エレベーターに挟まるる 
マイマイ蛾札幌ドームに被されり


   堀田季何(「澤」「吟遊」)
うねりながら巖這ふ瀧やうなりをり 
一条の滝一枚になりにけり 
表より裏迅く滝落ちにけり 
星河より滝こぼれおちゐたりけり 
文字盤を磨けば銀河遠ざかる


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