2014年2月7日金曜日

【朝日俳壇鑑賞】 時壇 ~登頂回望 その一~ / 網野月を

はじめに

毎週の「朝日俳壇」の中から独断選句し句評を試みるものである。

「朝日俳壇」は多くの投句の中から厳選されたものであり、価値の高い句が並んでいるにもかかわらず、選者の評は10句選に対して数句を取り上げて、100字程度である。いかにも惜しい。その一念から、本ブログに小欄を新設して頂きました。「朝日俳壇」は筆者が日ごろ慣れ親しんでいるもので、4人の選者の素より的確な選とその多様性が計40句の広がりを見せているものである。


朝日俳壇(2014年2月3日朝日新聞)から

冬晴や遠くの人を待つごとく (横浜市)山本裕

選者である長谷川櫂氏と大串章氏が押している。☆印(共選作)が付いている句である。櫂氏は評を書いていないが、章氏は、「第二句。「遠くの人」を「冬晴」が待ち、作者が待っている。感情移入の句。」と評している。この日の俳壇には、作者の境涯を詠んだであろう句意のものが多かったが、掲句は抒情というよりは叙景句の度合いの多い句であろう。上五の切れ字でリズムを作っているので、章氏の評のように「冬晴」が待ち、と解して良いのか迷うところだ。上五の「冬晴」を擬人法的に主語として解釈し、座五の「待つ」を述語として構想することは決して不可能ではない。が「冬晴」を眺めている作者が「遠くの人を待つ」ように佇んでいる、くらいの句意で解釈したい。

座五の直喩表現には読み手によって是非があるだろう。上五の切れ字とセットに考えると尚更議論の対象に成り得るように筆者は考える。掲句の場合「ごとし」と終止させなかったのが、句としてのリズムを独特なものにしているように感じる。



【執筆者紹介】

  • 網野月を(あみの・つきを)
1960年与野市生まれ。

1983年学習院俳句会入会・同年「水明」入会・1997年「水明」同人・1998年現代俳句協会会員(現在研修部会委員)。

成瀬正俊、京極高忠、山本紫黄各氏に師事。

2009年季音賞(所属結社「水明」の賞)受賞。

現在「水明」「面」「鳥羽谷」所属。「Haiquology」代表。




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