2021年2月12日金曜日

【新連載・俳句の新展開】第9回皐月句会(1月)[速報]

投句〆切1/11 (月)
選句〆切1/21 (木)


 北川美美さんが闘病の末1月14日に亡くなりました。お母さんから26日に連絡を頂きました。享年57のまだ若い死が惜しまれます。

【最後の投稿句】
鉢合わせの去年の御慶も誰も来ず 2点 北川美美

【評】 例年ですと客の鉢合わせで困ることが、今年は疫病のせいか人が来ない。一面寂しさがあり作者の複雑な気持ちが窺えます。 ──松代忠博
 並選 筑紫磐井
手鞠歌肉屋の娘は二九(じゅうはち)に 1点 北川美美
 並選 筑紫磐井

(5点句以上)
10点句
湯たんぽのたぷんと不審船がくる(望月士郎)

【評】 換骨奪胎という言葉は功罪両面を指す際に使われますが、良い方の意味で西東三鬼の水枕の句を換骨奪胎していると思いました。 ──妹尾健太郎

8点句
襖絵の海割つて父入り来たり(仲寒蟬)

【評】 特選。父が大きく偉く見えて嬉しい。「襖」が新年ではなく、単なる冬の季語であるにも拘わらず、新年の目出たさが感じられます。 ──渕上信子
【評】 見事な絵柄の真ん中を、ほろ酔い千鳥足の父が…などと思うと滑稽味あふれる景となります。 ──佐藤りえ
【評】 スケールの大きな襖絵の海を二つに割って、父が冬座敷に入ってきた。古い日本家屋と豪快な父の容姿や気性が見えてくる。 ──山本敏倖
【評】 ダイナミックな景に惹かれました。四枚の襖一杯に描かれた海の、真ん中の2枚を両側に開いて「父」が入ってきたのだと思います。その勢いと迫力が見事に表現されています。お屋敷の立派な座敷のしつらいと、そこの主たる「父」の人物像も想像されました。 ──前北かおる
【評】 まるでモーセのようだが、たぶん気弱で慌て者の父 ──望月士郎

7点句
べこの子の鈴あらたまの音立てり(小林かんな)

5点句
若菜摘む初めて海を見るやうに(真矢ひろみ)

婚約す鯨が沖を通る朝(内村恭子)

【評】 婚約も大きなイベントだ。鯨の朝も妙に心に響いた。 ──依光正樹

裸木や十のわたしがぶら下がる(田中葉月)
【評】 ふっと思い出したのは、三千年以上前の三星堆遺跡(古蜀文化と言われる)の青銅神樹だ。4メートルの青銅樹には9本の枝があり9羽の鳥が止まり、伝説では太陽を運んでいると言う。夏王朝時代に天に10個の太陽が上がり人民が苦しんだとき、羿という弓の名人が9個の太陽を射落としたとされる。こんな壮大な宇宙樹が背景にありはしないか。 ──筑紫磐井
【評】 どことなくアベカンぽくて、嬉しくなる句です。 ──依光陽子

六日失業七日七種粥を食べ(西村麒麟)
【評】 落語みたいな、かなしい可笑しさ。 ──渕上信子
【評】 淡々とした詠みぶりに好感。「そんなこともあらあな」という気分になりました。 ──青木百舌鳥
【評】 赤裸々でありながらどこか救いがある。命の尊さを少し考えてみたりした。 ──依光正樹

(選評若干)
去年今年生簀に眠る魚たち 3点 内村恭子

【評】 超時空の超写実・・・? ──夏木久

太陽のしづかにのぼり初鏡 2点 田中葉月
【評】 新年詠なるもの、淑やかにするか華やぐか、どちらにせよ須らくどちらかに徹し切るべしとして本句は淑やか。アマテラス、元始女性は太陽であったの連想も効かせてあり、姿の端然と決った句と存じます。 ──平野山斗士

鳳凰も龍も飛びゆく初日かな 1点 仙田洋子
【評】 鳳凰は中国古来の想像上の瑞鳥。龍も想像上の動物。初日の出に鳳凰も龍も飛んでいるのは、めでたい。コロナ禍の中、パッとしたスケールの大きい句にめぐり合えました。 ──水岩瞳

部屋ごとにちがふ時計の冬灯 4点 依光陽子
【評】 時計にはその住人、その所有者の趣味趣向が如実に表現される。腕時計にも。また、腕時計を着けないことも、その所有者の性を知る重要なポイントと考えている私に楽しい句。 ──千寿関屋

初日待つ犬は地の面嗅ぎ廻り 2点 平野山斗士
【評】 初日の出の名所は全国各地にある。少しずつ膨らみ始めた地平線に人間達は胸をときめかせるが、犬にとってはいつもの日常。縄張りの確認のために地面を嗅いでいる。普段は心を通わせている犬と感動を共有できないすれ違いのようなものを冷静に描いている。 ──篠崎央子

金箔のこぼれて加賀の祝箸 2点 中村猛虎
【評】 豪華絢爛。たとえお正月だけの虚構であっても、めでたしめでたし。 ──仙田洋子

我が影のみるみる巨人毛皮着る 4点 渡部有紀子
【評】 「みるみる巨人」。うまく言いましたね。 ──仙田洋子

落葉焚男子と女子が揉めている 4点 佐藤りえ
【評】 ご時勢柄、出句全体に新年の期待感や元気さが足りないなか、若い人達が、ハイティーンか。いやもっと低年齢のこどもたちなのか、暖を求めて集い、密を恐れずに焚き火などして、しかもなぜか「男子と女子」に分かれて「揉めて」いる。(この程度でも濃厚接触になりそうなので、決して密を推奨するわけではないが、青春とはこういうものだ、と我が昔を思い出す)に、楽しそうで活気あるこの光景に救われる思いがしたのは私だけだろうか?他にしっとりした佳句もあったが、今いちばんキモチを明るくさせてくれる情景が詠まれている。 ──堀本吟
【評】 揉め事は落葉焚きの煙のいがらっぽさほど些細なのだろうと想像させます。 ──小沢麻結

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