2022年5月27日金曜日

【連載通信】ほたる通信 Ⅲ (22)  ふけとしこ

  二羽

たんぽぽのわたを吹こうよ泣き止めよ

かいつぶり潜り覚えし二羽の子と

黄菖蒲や鋭く過ぎる鳥の声

上手とは言へぬオカリナ夏の浜

北山と名づけて薔薇の真白なる

 

・・・

 ある人から冊子が届いた。

 あなたの名前を出しているのでお送りしますとの添え書きがあった。

 私の名前が載っているところというのは、ヒメジョオン(姫女菀)についてのエッセーだった。ふけとしこさんからヒメジョオンの覚え方について教わった云々というのである。

 「芯はしっかり姫女菀と覚えればいいのよ」と私が言ったのだそうな……。違います! それは間違いです! 私は「芯はしっかりお姫様」と言ったのである。と言ってもこれは私の発見でも言葉でもなく、植物写真家いがりまさし氏の受け売り。そのことも同時に話していたはずだ。

 何の話かというとヒメジョオンとハルジオンの見分け方のことなのである。ユーミンに「ハルジョオン・ヒメジョオン」という歌があったが、正しくはハルジオン・ヒメジョオンということになる。でもこれは歌詞だから、まずは作詞家の意図であったり、美意識であったり、歌う時の音を調えるためだったりすることである。漢字で書けば春紫菀・姫女菀となるのだが、それはそれ、植物図鑑ではないのだから……。

 その図鑑では春紫菀は春。姫女菀は夏に分類されるが、多くは春から夏、秋にまでも混在していることが多い。どちらもアメリカからの外来種でキク科。白い小さい花を咲かせる。見分けるには、花の色とか花びらの数や大きさの違いを知っていなければ難しい。ハルジオンはうっすらと紅色を含み、蕾の時には下向きであるといったささやかな特徴があるけれど、これは二種の花を並べてみないと見分けがつかないかも知れない。

 そこで一番手っ取り早いのが茎を折ってみるという方法なのである。ハルジオンは茎の中が空洞、ヒメジョオンは髄が詰まっている。そこで前述の「芯はしっかりお姫様」という覚え方が出てくることになるのだ。このことを草の観察会の時に話したのであった。他人様から見ればどうでもいいことだろうが、私としては面白くない。いがりまさし氏にも申し訳ないではないか。

 というわけでふけとしこさんは少々怒っているのである。

 ヒメジョオンは季語になっているが、何故かハルジオンは歳時記には見当たらない。

 野原はもちろん、土手や空地、道路の分離帯でも今頃は花盛り、白い花が風に揺れている。

(2022・5)

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