2015年1月23日金曜日

【鑑賞】 宮崎斗士句集 『そんな青』 -オンリーワン俳句の息吹-  / 豊里友行



『そんな青』宮崎斗士句集の私の読後感は、丁寧に日常を生きているということ。

この句集は、生活の営みの息遣いや言葉のニュアンスなどを丁寧に噛みしめるように観察しているからこそ表現の細部のこまやかで鮮やかな表現に実感を持って活かされている。

宮崎の第一句集の『翌朝回路』に見られた感性の原石は、彼の日々の丁寧に生きていく俳人としての姿勢によって磨かれ、さらなる俳句の新境地へと歩み始めている。

第二句集にあたる『そんな青』宮崎斗士句集は、宮崎斗士のオンリーワンの生き様であり、現代をみずみずしく生き生きと表現したひとつの可能性をしめした新しい俳句の領域を提示している。

宮崎の俳人としての類まれな才能は、現代人の息遣いのリアリティーを獲得する。

それは、俳句らしさではなく、宮崎斗士らしさであり、表現者として幸福な表現世界の確立を成した俳人としての現代俳句の世界と言える。

 宮崎斗士の感性は、日々、24時間、暮らしの中で俳句の中に息づかせている。

その言葉は、生き生きと彼の俳句の息遣いとして第2句集『そんな青』における等身大な宮崎斗士のオンリーワン俳句として確立を成した。

俳句という表現において彼の人生が、その句集の俳句の中に立ち上がる。

これらの俳句たちは、彼の日常性の息遣いとして丁寧に表現されている。

宮崎斗士俳句は、金子兜太を師として学び、「海程」俳句会の先輩後輩の切磋琢磨する俳句の場がある。

そして彼がリーダー役として「青山俳句工場05」の俳句の場においても俳句をみんなで議論し合い、俳句に精進している姿勢は、細やかな俳句活動の営みとして一貫している。

この句集において彼の喜びも悲しみも素敵な俳句の記念日として結実している。

宮崎斗士の俳句そのものを純粋に楽しんでほしいが、すこしばかり私の解釈を入れさせて頂く。
本当に優れた俳人として彼は、着実に成長を遂げられている。

さらなる宮崎斗士俳句の表現領域の開拓に精進されることを切に望む。


 平穏って見つめ合わない雛人形
一緒の生きるスピードなんでしょうね。

なんでもない言葉で喩で生きている、感じているニュアンスを表現できる丁寧さだって新たなる俳句の地平ではないだろうか。


 父と子の会話蟹味噌ひと匙ほど
言葉の味付けに宮崎さんのエッセンスが効いている。


 秋葉原に僕の定位置冬の蜂
宮崎斗士ワールドの、オンリーワンの醍醐味。


 氷湖ありもう限界のボクサーに
ぴったり言い切る比喩の的確さが魅力的。


 海鼠拾えばわがほろ苦き現在地
海鼠(なまこ)に心を通わせつつも自己の心境の把握が俳句の味を出す。
いわゆる宮崎斗士ワールド。


 みんな笑顔雪合戦の一球目
よく観察している宮崎の面白がるツボとユーモラスが心地よい。


 青き踏むふとおっぱいという語感

俳人として言葉を語感を丁寧に噛みしめている爽やかなエロス。


 「じゃ、上脱いで」とあっさり言うね蛇苺
すがすがしいエロス。


 尺取虫街少しずつバリアフリー
バリア・フリーとは障害者や高齢者が生活していく際の障害を取り除き、誰もが暮らしやすい社会環境を整備するという考え方のことをいう。

体ごと尺取虫のわずかな前進を丁寧に観察しているからこそこの直喩が活きている。

 ひとり言の意外な重さ秋の蛇
言葉が言霊になり生き方を決定づけていくことと自覚・覚醒。


 わが良夜細い絵筆で仕上げてゆく
そんな良夜があり、宮崎斗士俳句の確立していく。

わが道を行く。

楽しんで行く。

等身大の自分をさらけ出せるからこそ多くの共感を得ていける。



このほか私の気に入った共鳴句を最後に掲げさせていただく。


 花合歓や光源氏にインタビュー  
 かたつむり術後同士という呼吸 
 バックミラーに向日葵今だったら言える 
 秋葉原キスが嫌いで鮫が好き 
 祖父も笑顔鮟鱇鍋のそんなリズム 
 消去法で僕消えました樹氷林 
 婚期という長さ短さ牡蠣すする 
 ギンヤンマいい質問がつぎつぎ来る 
 会えないまま雪が溜まってゆく水槽 
 鮫すーっと動いてたっぷりの夜かな 
 鯨が一頭ゆっくりじっくりと術後 
 炬燵で寝て目覚めて嫉妬だと気づく 
 そそっかしいシンバル奏者春嵐 
 天文学っておおむね静かふきのとう 
 桐咲けり日常たまにロングシュート 
 鮎かがやく運命的って具体的 
 母と暮らす時報も鉄線花もふわり 
 かまきりやこの村オムライスの明るさ 
 寒満月石だんだんと椅子のかたち 
 疲れたかな一羽の冬かもめに夢中 
 メール送信狐とすれちがう呼吸 
 ポインセチア家族ぴったり満席です






「 第一句集『翌朝回路』 宮崎斗士句集は、感性の原石だ!」
( 「とよちゃんねる 2011年12月12日」より )

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