ひょんなことからバラエティ番組で俳句を語ることになった。夜7時のゴールデンタイムで、ダウンタウンの浜ちゃんが司会をする番組となればバラエティ中のバラエティといってもいい色合いの番組(『プレバド!!』全国TBS系隔週木曜日)。そんな番組で、なぜ俳句?とも思いはしたが、我が俳句集団『いつき組』の使命は「俳句の種まき運動」!100年俳句計画の志を掲げて活動に邁進することが、我々組員の喜びである。(「超辛口先生の赤ペン俳句教室」(夏井いつき著)のあとがきよりより)
句集「一人十色」(梅沢富美男 著、夏井いつき 監修、2023年刊、ヨシモトブックス)は、第一編「傑作五十句」、第二編「梅沢富美男の歴史」などが収められている。
その中の対談「梅沢富美男×夏井いつき」にて俳人としての梅沢富美男の成長も言葉に表出している。
「番組から最初のオファーをいただいた時は、どうやって俳句を作ればよいのかまったくわからない状態でした。季語を選んではめ込むらしいぞ、とその程度の知識。あまりにもわからないことばかりだから、まずは本を買って読んでみようと思ったんです。ただ、ページをめくってみたものの、難しくて理解できないことも多くて。でも俳句は舞台のセリフでよく使われる七五調のリズムだとわかったので、「もしかしたら詠めるかもしれないな」とも思い、軽い気持ちでスタートしたんです。」
「夏井先生は俳句のことしか頭にない人なんですよね。俳句に関するお仕事だったらどこへでも飛んで行く。そんな姿を見て、俳句の種を蒔くお手伝いとして、私が俳句を学んでいくことで、その種をもっと蒔いていけるなら、頑張っていきたいですね。」(どちらも梅沢富美男さんの言葉)
ナイターの売り子一段飛ばし来る
プロ野球観戦の球場は、大入りでナイターの灯る活気。その観客席の賑わいの中で忙しく売り子は、お客さんが呼ぶ手の降る方へ階段の一段をひとつをぴょんっとジャンプして飛び歩く。この階段の一段を飛ばす所作にナイターの賑わいを喚起している。俳句の座だけでは分からない誰も気にとめないナイターの野球場の売り子を題材に秀句ができるのも乙なものですね。
旱星ラジオは余震しらせをり
旱星は、夏の季語でひでり続きの夜に見える星のこと。その星が揺れるように見えた。ラジオからは、余震を知らせるニュースが流れている。地震災害の多い日本列島で日常の生活の茶の間からも現代社会を詠める良い例ですね。
セルフレジだけのコンビニ花曇
花曇は、春の季語で桜の咲く四月頃の曇りの天気をいう。コンビニの店員の居ないセルフレジでバーコードをスキャンして読み取って買い物をしていく。そのセルフレジだけのコンビニがあることに花曇のなにやら桜色の浮き立つ心だけではないそこはかとないさみしさもある。現代社会を言葉になる寸前の何かを捉えた現代批評の芽もある。また「水玉の模様クロックスの日焼」「暮れてゆく秋の飴色セロテープ」「春の雪なほ現役の鯨尺」「春愁をくしやと丸めて可燃ごみ」など梅沢富美男句集には、日常の何気ない題材が俳句化されているのも特徴のひとつで俳句の題材を拡張している。
南国の果実色してハンディファン
ハンディファンは、手で持って使う携帯型小扇風機(ポータブルファン、モバイル扇風機ともいう)のこと。地球温暖化の昨今、暑い日は気温30度越えで地域によっては屋外にでるのを控えるよう注意を促す放送が流れる。ここでは南国の果実が、夏の季語とも読める。この南国の果実色の比喩が大変な効果を上げている。この小型扇風機を顔に押し当てるようにして街中の若者たちが蠢めいている。現代諷詠としても御見事な秀句だ。
俳句の座は松尾芭蕉の時代から令和のテレビで茶の間までわかして夏井いつき先生と梅沢富美男さんたちの俳句の掛け合いで賑わう。夏井いつき先生の云う「俳句の種まき運動」が俳句の座の拡張につながっていることは、梅沢富美男俳句の「一人十色」にも顕著にうかがえる。
【参考資料】
「超辛口先生の赤ペン俳句教室」(夏井いつき、2014年刊、朝日新聞社)