合はす
歩く歩く両肌脱ぎの蓑虫が
鈴虫の骸に髭の真白なる
みちのくの菊と都の酢を合はす
ぐりのクッキーぐらのクッキーほら紅葉
霜光る誰かの大き靴跡に
・・・
〈橘始黄〉たちばなはじめてきばむ
小雪の三候、七十二候にこういう。
橘ではないが枳殻のまん丸い実も熟れている。生垣の下にころころと落ちている。一つ拾ってみた。柔らかい産毛が掌に気持いい。この実には種が多かったと記憶していたので、半分に切ってみた。直径2.3cm。種を数えると24個。まさに種だらけ、種密度が高い。
からたちの花が咲いたよ
白い白い花が咲いたよ
と始まる北原白秋の詩「からたちの花」には
からたちも秋はみのるよ
まろいまろい金のたまだよ
と実を詠った一節もある。鋭い棘も詠っているが、さすがに種のことまでは言っていない。
カラタチはミカン科ミカン属の常緑低木。3㎝にもなる太くしっかりした棘が目立つ。この棘が賊や獣の侵入除けになるとのことで、畑や住宅の生垣に使われていたが、今ではあまり見かけなくなった。
いつだったか、小学校の生垣にされているのを旅先で見かけたことがあった。手入れが大変だろうし、児童達が怪我をすることもあるかも知れないな、と思ったりもした。
でも、初夏に白い花が咲き、秋に実が熟れる生垣というのは何とも素敵なものである。
香りはいいが、酸味と苦味が強すぎて食用にされることはまずない。これは橘も同様だろう。
『合本 角川俳句歳時記・第五版』の巻末付録に〈二十四節気七十二候〉があるが、これには「橘が黄葉し始める」と書かれている。橘は常緑樹で、それ故に古来尊ばれてきたわけでもあるから、黄葉はしないはず。偶々見つけただけなのだけれど、気になる。
他に2、3の歳時記を当たってみたがどれも「橘の実」となっている。校正の際の見落としだろうが、こういうことも起こり得るのだ。初校、再校、再々校と綿密なチェックが入ったことだろうに。
三浦しおん作『船を編む』の辞書作りの顛末、てんやわんやをを思い出した。
(2024・11)