2024年6月14日金曜日

■ 第47回皐月句会(3月)速報

投句〆切3/11 (月) 

選句〆切3/21 (木) 


(4点句以上)

7点句

木蓮や故人ばかりの映画見て(岸本尚毅)

【評】 イメージを広げる言葉や暗号的言語を含む句より、記憶の中に屹立する言葉の句を選んでしまった(42も含め)。42、八代亜紀さんとは…、20代の頃、大阪SABホールの隣の喫茶店にいた折、彼女の楽屋へコーヒーを出前した、飾らない優しい笑顔が印象的だった。その後付き合った人(娘の母親だが)八代さんと山本陽子を足して割った…、今年お二人とも不帰の客に…、そして40、マグノリアと映画がドラマだが…、この歳になると知人・友人が少ない私でも、色々なご逝去を考えてしまう…──夏木久

   42. 裏道を雨過ぎるべし舟歌忌 3点 小林かんな

   40. 木蓮や故人ばかりの映画見て 7点 岸本尚毅

【評】 出演者がみんな昔の、つまりは古い映画。木蓮の清楚で気品のあるところが往年の日本の俳優・女優のようだ。──仲寒蟬


5点句

街の人きらきらとして花の冷え(依光正樹)


人の世をあきらめ顔の雛かな(仙田洋子)


4点

蘖す古代円形競技場(内村恭子)

【評】 切った草木の根株から萌え出た芽のこと、蘖すと、古代円形競技場の字面とその景との衝撃によるイメージにより、ひこばゆのさまざまな萌え競うドラマが浮かぶ。──山本敏倖


出口より入る玄室ヒヤシンス(松下カロ)

【評】 あの玄室の口は出口なのか入口なのか。死者にとっては前者だろう。ヒヤシンスの付け方が絶妙。──仲寒蟬


(選評若干)

アラレ降るキーンと両手広げゆく 2点 千寿関屋

【評】 鳥山明さんの訃報を受けての句。アラレちゃんが流行っていた頃だけ父親と仲が良かった眼鏡の私は「アラレ」と時々呼ばれていたことを思い出す。──辻村麻乃


肉強くなつて囀りゐたるかな 3点 依光陽子

【評】 囀りに対して「肉強く」とは、こんな発想は初めて。──仲寒蟬


歳とつて桜草には水を遣る 2点 依光陽子

【評】 一見何でもない日常の行為も人それぞれ流儀やジンクスに則っていて、歳をとるにつれこだわりが顕著になるものかも。そうとは知らず眺めるうちにふと気づくと不可解に思えたりする。すぐ傍のムスカリにはなぜ水あげないの?とかとか──妹尾健太郎


風車筆立にあり風が来る 3点 岸本尚毅

【評】 風車が存在して風が来る、言われてみるとなるほどと思います。この捉え方に風を感じました。──小沢麻結


希釈して混ぜるカルピス風光る 3点 内村恭子

【評】 淡い乳白色、グラスに当たるマドラーの音、「カルピス」の語感が心を明るくしてゆき下五の季題に着地します。一読眩いそよ風が心地よいです。──小沢麻結

【評】 昔は少し暖かくなってくるとこのカルピスが楽しみだった。いまは最初から出来合いのものも売られているが。──仲寒蟬


二度と会えぬことになるとは卒業歌 1点 水岩瞳

【評】 人の一生は通奏低音のように卒業歌が響いているものなのかもしれない。卒業歌を歌っていた頃には深く考えもしなかった二度と会えぬことになる“今”を、だんだん強く意識するようになる。──依光陽子


人形も逢瀬も包み春ショール 3点 松下カロ

【評】 全く性質の異なるものを包んでしまう春ショールは素敵だ。──仲寒蟬


産まぬ世や鬱々として鳥雲に 2点 真矢ひろみ

【評】 人間の3大欲望と言われるものの一つの性欲は生命そのものの本質のように思われるが、意外にそれは社会の影響を受けてしまう。もう一つの食欲との大きな違いだ。食欲の句は天真爛漫として楽天的なのに対し、性欲の句はいじいじとして陰湿だ。──筑紫磐井


兜太忌を数へ小指の立つ寒さ 3点 飯田冬眞

【評】 寒そうだし座布団2枚あげたい──真矢ひろみ