2023年3月10日金曜日

■ 第32回皐月句会(12月)[速報]

投句〆切12/11 (日) 

選句〆切12/21 (水) 


(5点句以上)

8点句

へその緒の桐箱匂ふ冬日向(飯田冬眞)

【評】 木の香立つ新しい桐箱。新しい命誕生の証のへその緒が収められている。清潔で柔らかな冬の日差しの祝福を浴びているようだ。──小沢麻結

【評】 そう言えば桐箱に入ってました。これは冬でないとね。──仲寒蟬


7点句

顔ぶれは変はらぬ村の焚火の輪(松代忠博)

【評】 常連さん、いつも同じような話。中の人には居心地のいい場所、外の者には近づきがたい。──仲寒蟬


三畳の艦長室や日記果つ(中村猛虎)


6点句

毛糸編む地球滅びるその日まで(内村恭子)

【評】 地球も生命も滅びようとも、愛する人への思いは不滅。──仙田洋子

【評】 案外そうかも。──渕上信子

【評】 「渚にて」を思い出します。──筑紫磐井


蓑虫は遠近法の外にあり(岸本尚毅)

【評】 見詰め見詰めているうちにクローズアップされて見えて来たという印象ですね。巧みな「云い表しよう」の一句と感受します。──平野山斗士

【評】 蓑虫が遠近法の外なら我々は内かな。──仲寒蟬


人事部に届くケーキやクリスマス(内村恭子)

【評】 組織管理の要である人と金。殊に人事は清濁併せ持つ世界。ケーキを受け取った人事職員はその意図をめぐって沈思。笑──真矢ひろみ

【評】 誰が食べるかでもめそうなケーキ。あるいはたくさんあって困惑されるケーキ。ケーキは喜びばかり届けるにあらず。──佐藤りえ

【評】 一瞬バブルの頃を思い出したが、「人事部」というのがこの句のミソ。けっこう古くからある会社で、きっと毎年クリスマスには社員にケーキを配るのが習わしなのだろうが、縮小を重ね、今は人事部で扱えるほどの量しかないのだろう。「総務部」に届いたのではないところが今の世相を表している気がする。──依光陽子


(選評若干)

猫塚に猫うづくまる漱石忌 3点 飯田冬眞

【評】 猫塚、猫、漱石忌とやりすぎの感はあるが、「猫うづくまる」が効いていて、独特の味わいがある。──仙田洋子


裸木や拳を何にあげるべき 2点 水岩瞳

【評】 裸木はまるで両手を挙げるような格好をしている。その様子と不条理への怒りの拳の対比が効いている。──辻村麻乃


むささびや夜のどこかにひらく火山 4点 仲寒蟬

【評】 〈むささび〉から〈火山〉への展開に驚きました。──篠崎央子

【評】 肢間にある皮膜を広げ、木から木へ滑空する夜行性のむささび。そのむささびを見上げた時、夜のどこかでひらく火山を感受。まったくの感覚とイメージの句だが、夜の存在が不思議な一寸景を呼び覚ます。──山本敏倖


討入日消しゴム買ってコーヒー飲む 3点 松下カロ

【評】 討入の日と消しゴムとコーヒーの関係性の解らなさに引力がある。意味ではないところでこころを鷲掴みにされた。──妹尾健太郎


浮鳥や歩行補助車(しゃ)の妻(め)に添ひて 1点 千寿関屋

【評】 基本的なことをお教えください。「歩行補助車の妻(め)に添ひて」と「歩行補助車の妻(つま)に添ひ」とどちらが良いでしょうか。──渕上信子


水占や曇天に乗る柿落葉 1点 山本敏倖

【評】 水占、貴船神社で見ました。「曇天に乗る」がうまい。──仲寒蟬

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