2022年9月23日金曜日

■ 第28回皐月句会(8月)[速報]

投句〆切8/11 (木) 

選句〆切8/21 (日) 


(5点句以上)

8点句

指先のしつかりとある捨案山子(西村麒麟)


7点句

秋天を縄梯子 誰を昇らしむ (哀悼 救仁郷由美子)(堀本吟)


6点句

その奥へ誘ふちから鉄風鈴(真矢ひろみ)

【評】 「鉄」が効いています。──渕上信子

【評】 南部鉄風鈴の音が聞こえている。夢うつつに誘われる先は陸奥であろうか。この句で「奥」は何のと限定されていないが、奥州路のそれに思える。──妹尾健太郎


八月や主変はりし家の犬(中山奈々)

【評】  犬は主に付くと言われているが、環境が変われば主を変えることもある。八月の終戦。日本人は主君を変えることとなった。──篠崎央子

【評】 犬ではなく主が変わったのですね、祖父母から父母へか、または父母から子へ、なのか。人の死も犬の側からするとこういったことになりますか。──佐藤りえ


草市のもう飽きてゐる男の子(西村麒麟)

【評】 男の子は子どもにもよるが飽きやすい傾向にあるように思う。親に連れられた出先で飽きてぐずる様子が見えてくるようである。──辻村麻乃


滴りの上に滴り猿が棲む(篠崎央子)

【評】 崖の層に次ぐ層を仰ぐような上昇感覚。尋常の山ではない心地がします。この猿も、金絲猴といったような幾らか霊獣めいた猿のように思われます。──平野山斗士


5点句

向日葵の種を兵士のポケットに(飯田冬眞)

【評】  種が無事育ち一面の向日葵を見たい、と思いました。今は平和の地として。かの映画を彷彿とさせます。──小沢麻結


三面鏡するすると夏帯の落ち(仙田洋子)


前掛けの結び方から夏バイト(千寿関屋)

【評】  なるほど!──渕上信子


文を書くときおり蛍狩にゆく(望月士郎)


少年の影と一対夏の蝶(妹尾健太郎)

【評】「少年の影」ですから、これは思い出でしょうか。美しく儚い情景に惹かれました。──水岩瞳


(選評若干)

星座表回し傾く甚平の子 4点 内村恭子

【評】 帰省した祖父母の家か避暑の宿か、そんなところの縁側あたりで星座表と星空を見比べているのだろう。甚平の子の年頃や、夜涼の雰囲気だとか、周辺が自ら想像される。──青木百舌鳥


10Bで描く贋物の白夜かな 1点 山本敏倖

【評】 白夜自体、偽物のような期間(時間)だ。映画「ミッドサマー」を観たひとならあのカルト的まやかしをニンゲンが作るのか白夜が作り出しているのかわからなくなる。10Bの鉛筆で描かれた白夜の輪郭ははっきりしているが、そこに影が書き込まれることはない。形と光しかない。それは平面なのだけど、魔の力を借りてか、起きあがろうとしてくる。──中山奈々


自販機に停まれば汗の吹き出いでし 1点 千寿関屋

【評】 自販機の前に停まった時、それまで忘れていたかのように汗がどっと吹き出てきた。これはたぶん自転車で来た人、自販機の色は赤だ。──依光陽子


梅を干す影重ならぬよう梅を干す 2点 中村猛虎

【評】 私も梅を干しましたので、実感があります。私なら「梅を干す影重ならぬように干す」とするかも。──渕上信子


杖ふって虹など掛けてみせましょう 3点 小林かんな

【評】 楽しい!──渕上信子

【評】 まずはこのファンタスティックな、人を食ったような発想に魅かれた。句意は良く解ります。しかも具象的に。まさに仙人の境地。こういう俳句もあって良いかと。──山本敏倖


化け猫の干からびてゐし草いきれ 3点 仙田洋子

【評】 草いきれの素性に化け猫がいたとは──真矢ひろみ


世界中はためき初むるかき氷 1点 依光陽子

【評】 どんなに世界が大騒ぎになっていても一杯のかき氷の清涼感で、こころはおちつくものである。しかし、一方で、かき氷の店の周りにはためいている万国旗の様も、その世界の象徴のようにもみえる。身辺も亦国際色豊か、というところへ持ってゆく落ち着きを良しとしたい。──堀本吟


夫は蜜われは酢醤油ところてん 2点 渕上信子

【評】 男がこんな甘たるいものが食えるか、という時代がかわってきています。「夫は蜜」・・といいきった甘い関係を大切に。──堀本吟


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