2022年9月2日金曜日

■ 第27回皐月句会(7月)[速報]

投句〆切7/11 (月) 

選句〆切7/21 (木) 


(5点句以上)

10点句

なつやすみ白紙に水平線一本(望月士郎)

【評】  絵日記でしょうか?いや、平仮名だからついそう取ってしまったけれど「夏休みというものは・・・」ということかもしれません。何でも出来そうだった子供の頃の夏休み。正に大きな白紙いちまい。水平線一本は海の思い出とも目指すべき未来とも。──仲寒蟬


6点句

噴水にどしゃぶりのきて笑い合う(望月士郎)


5点句

病家めく木槿の花を掃かざれば(青木百舌鳥)

【評】いつの間にか大きな樹となって、掃いても掃いても間に合わない。朝に夕に散り落ちている木槿の花が気になってならない主人。つい口を衝いて出た言葉を一句に仕上げたものとも思われるが、実のところは健やかな一家なのであろう。──妹尾健太郎

【評】 地面に落ちた木槿の花。人の気配があまりない家のしずけさ。木槿が掃かれずにあることに着目したことで「病家めく」空気感を伝え、木槿の花のくしゃっとした質感までリアルに見せた。──依光陽子


賽の目の数だけ歩む大暑かな(飯田冬眞)


サルビアの色が溢れて死期の窓(筑紫磐井)

【評】 サルビアの造花めく乾いた赤。死期を悟った生命の赤さを冷静に眼差している。──篠崎央子


万巻の花鳥諷詠きらら棲む(水岩瞳)


(選評若干)

巻き戻す身投げ映像沖縄忌 3点 水岩瞳

【評】 巻き戻すは、身投げ映像のことでもあるが、それ以上に沖縄の、戦争の風化してはならない記憶のことも背後に含んでおり、沖縄忌が効果的。──山本敏倖


とねりこの花灼け羽蟲押すな押すな 2点 平野山斗士

【評】 暑い日の情景が生き生きと描かれています。──渕上信子


打水や濡れて生き生き足の指 4点 小沢麻結

【評】 打水が自分の足にかかってしまったのだろうか。暑い一日を過ごして疲れ切った肌も、ふいにかかった水によって瞬間的に色艶を取り戻す。その驚きが伝わってくる。──辻村麻乃


数学と宇宙の間の涼しさよ 4点 中村猛虎

【評】 典型的非理系の自分にとっては、この何物かに涼しさを感じることができる識見に嫉妬と憧れが綯交ぜに。 数年前に素数ーリーマン予想を素材にした句を作ったことがあり、その時一瞬感じたもの、ひょっとすると空海が洞窟の奥で感じとった識、:これを数式でなく日本語・短詩・俳句では「涼しさ」とするということか──真矢ひろみ


七夕の空あざやかに船出せり 2点 田中葉月

【評】 天の川を活かして恋めく句にせず壮行の句にした処が眼目。中七はやや饒舌ながらそれゆえに率直、快い味が出ています。──平野山斗士


片蔭に半身異界にその残り 4点 真矢ひろみ

【評】 その残りは眩しい日差しに眩む目に良く見えない。白昼なのに怖い。いやこの認識は間違いだ。白昼は怖い。──小沢麻結


職持たぬをのこを待ちぬ花擬宝珠 2点 篠崎央子

【評】 無職、でもこの男を一番愛してる。──渕上信子

【評】  この独言のような中七までと季題のよろしさ。──依光正樹


雨待てば草かげろふの卵揺れ 3点 依光陽子

【評】 細い糸の先にぶら下っている小さな卵が揺れている。好きな写生句。──渕上信子


風鈴やどのチャンネルも速報に 4点 小林かんな

【評】 よその家のテレビからの音なども混じって聞こえているかも知れない。風鈴の音は背後の雑音となる。──青木百舌鳥

【評】 早鐘のような風鈴の音、一斉に速報に切り替わる画面。緊迫した空気が熱い風とともに押し寄せる。──小沢麻結


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