2022年7月15日金曜日

北川美美俳句全集20

 面119号「春の家」2016年5月


春の昼いびつな石にいる烏

大小の草履の並ぶ春の家

青草や犬繋ぎおく紐・クサリ

ちる桜昭和昭和とつぶやきぬ

まなざしは宙にありけり十九の春

金魚屋に金魚の水をもらいけり

水を蹴る足裏は白き平泳ぎ

白靴でピアノペダルを踏む男

見つめ合う男同士やアイスティ

あんみつや桐生に駅が三つあり


面120号「春の家」(2016年7月)


春の昼いびつな石にいる烏

大小の草履の並ぶ春の家

青春や犬繋ぎおく紐・クサリ

ちる桜昭和昭和とつぶやきぬ

まなざしは宙にありけり十九の春

金魚屋に金魚の水をもらいけり

水を蹴る足裏は白き平泳ぎ

白靴でピアノペダルを踏む男

見つめ合う男同士やアイスティ

あんみつや桐生に駅が三つある


面121号「不在」()


手は水を掬ひにゆきぬ麦の秋

しづかなるじやがいもの花日傾く

白日傘脚美しく迫りくる

欄干がくるぶし高や旱草

ゆふべと同じ秋茜かもしれぬ

すでにある脚立と籠や林檎の木

第三京浜より月離れゆく

旅客機の窓ごとに顔秋の暮

凩や狼祀る木の家に

雪原に人のかたちの窪みあり

鉛筆は兄の匂ひや春遅々と

梅一輪つめたくなりし塩むすび

菜の花の暮れて人来る空地かな

夜桜に背中を向けて座る席

走ることすなはち桜吹雪かな

青杉にわれ隠れてや誰もゐず

茄子の花に黒き管ある夕かな

夜店にて星を忘れてをりにけり

ハンカチの正方形となりしとき

夏の月うしろ歩きのさやうなら

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