2022年4月8日金曜日

第23回皐月句会(3月)[速報]

投句〆切3/11 (金) 
選句〆切3/21 (月) 

(5点句以上)
8点句
山姥の爪よくのびる桜東風(田中葉月)
【評】 山姥だから面白い。──仙田洋子
【評】 不気味な一句であるが惹かれる。実景のはずがないのに妙にリアリティがある。山姨は爪を伸ばして何をしようとしているのか。「桜東風」という美しい季語をひっくり返す試み。東風は花のつぼみばかりでなく起こしてはならぬものまで起こしてしまうのかも。──仲寒蟬

7点句
掌の中に生命線のある余寒(中村猛虎)
【評】 実感あり。──渕上信子
【評】 余寒をものともしない生命力。──仙田洋子

6点句
蜥蜴出づ二股の舌世を探り(小沢麻結)
【評】 修辞に、重心が寄っているけれどバランスを崩さず保ってある、練達の句と見ます。〈二股〉に、篤実な目の効き具合。──平野山斗士

崩れそうで崩れぬ本の山笑う(松下カロ)
【評】 「本の山笑う」のdouble meaning が上手い。身につまされて笑ってしまいました。──渕上信子

5点句
いつまでも喋り続ける春の雪(中村猛虎)
【評】 しゃべりつづける人と春の雪が別次元のように描かれた。青春の句と思える。──依光正樹

椿一輪ゆつくり息を吐ききつて(田中葉月)
【評】 椿が落ちてゆく様子でしょうか~人間の末期のように。──水岩瞳

三月のひかり水切りりりりりり(望月士郎)

卒業す校舎を蹴りし土の跡(内村恭子)


(選評若干)
胃の中と思いもせずに山眠る 3点 妹尾健太郎
【評】 山が眠っているのは実は胃の中だった。何の胃かは書いてない。読み手のイメージに任されている。小さなものの中に大きなものを置く、逆転の発想。中七の騙し絵的イメージへの誘導が効いている。──山本敏倖

春の泥くるぶし濡らしつつ塔へ 2点 飯田冬眞
【評】 この句の「塔」を最初は仏教寺院の五重塔と読みやや妖艶な僧侶らの姿など思った。それにしても踝を濡らす様は不穏だ。その後に別の「塔」もいくつか思い描いた。仏教以外の宗教的建造の塔もそうだが、現代のテレビ塔などに立て籠る者が居りそれにひたひたと忍び寄る者にも思えた。──妹尾健太郎

売る人と買ふ人のあり鶯笛 3点 西村麒麟
【評】 そう言われてみると、本家の「鶯」を売り買いすることはないと気が付かされます。当たり前のことを言っているようで、妙に心惹かれるものを感じました。梅林の売店か何かかなと想像しましたが、ありきたりな景に潜む不思議という感じで面白かったです。──前北かおる

鈴振つて春眠の神起こしけり 4点 仲寒蟬
【評】 何かを鳴らし誰かを驚かすのはありふれたように見えるが、神社の神を詠み、神を目覚めさせるのは類例がないようだ。表現も格式が高い句となっており気持ち良い。水原秋櫻子が、昭和初期、まだ訪れる人もなくひなびていた浄瑠璃寺を訪れ、感激していた風景を思い出す。──筑紫磐井

自販機に迷ふ二択や鳥曇 2点 千寿関屋
【評】 こういうシーン、けっこうある!  数秒から長い時は数分、かなり真剣に悩んでしまう。傍から見たら自販機の前に突っ立っている謎の人。さらに引いて見たらその日は曇りの日で、鳥が帰っていく鳥曇の日。大空を鳥は迷うことなく帰って行って、自販機も迷っている人物も辺りの建物も標のようだ。──依光陽子

春の雲喜雨亭翁に似たるかな 2点 平野山斗士
【評】 久しぶりに喜雨亭ということばを思い起こしました──真矢ひろみ

春泥を踏まねばならぬハイヒール 3点 松下カロ
【評】 嬉しいことと嫌なことが相俟って大人の人生ってこれ、というような、春の一こまでしょうか。──小沢麻結

春や春デートの相手いつも夫 2点 渕上信子
【評】 上五は推敲の余地あるかもと思いつつ、中七以下に共感。夫で嬉しい?少なくとも悪くはないとしても、いつもではね・・・・・・──仙田洋子

春眠し夢のマニマニが来るよ 2点 望月士郎
【評】 菅原道真に〈このたびは幣も取りあへず手向山紅葉の錦神のまにまに〉という歌がある。〈まにまに〉は、間に間にの意味。藤あや子の歌で「夢のまにまに」という歌がある。ずっと「マニマニ」って何だろうと思っていた。マニマニする動物なのだろうとも思っていた。

鳥どちに向き不向きある巣箱かな 4点 水岩瞳
【評】 大が小を兼ねる…ということはないそうですね。──佐藤りえ

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