2022年4月8日金曜日

連載【抜粋】〈俳句四季4月号〉俳壇観測231 鷹羽狩行論の行方――狩行は如何に行動し、思考し、かつ批判されたか  筑紫磐井

 鷹羽狩行の近況

 「香雨」一月号に、「名誉主宰による「甘露集・白雨集・清雨集抄」は、先生のご負担が大きいため終了といたしました」という小さい記事が載っていた。「休載」ではなくて「終了」にちょっとショックを禁じ得なかった。

 「香雨」は片山由美子の主宰誌であるが、誰も知るように鷹羽狩行主宰の「狩」を承継した結社であり、鷹羽狩行は現在「香雨」の名誉主宰でもある。従って、「香雨」でも片山由美子氏と並んで中心的活動をしていた。平成三十一年一月「香雨」の創刊時の鷹羽狩行の活動は次の通り予告されていた。

 ①「二十山」の連載(狩行はナンバリング句集を刊行しており、『十八公』まで刊行されている。そのため次の刊行予定の句集名を予想した標題の作品を発表しており「狩」では「十九路」まで発表しており、新たに「香雨」で始めたのがこの標題であった。)

 ②「甘露集・白雨集・清雨集抄」(香雨同人作品)の抽出

 ③地方句会の指導

 この他に、若手同人による狩行作品の鑑賞批評である、「リスペクト狩行」が行われた。

 しかし、「香雨」の創刊直後コロナの流行と重なってしまい、句会活動そのものが滞る中で、二年以降は地方句会での指導の活躍も見られなくなった。一方で体調も思わしくないらしく、「二十山」の連載も令和三年八月以降見られなくなった。そういえば今年の総合誌の新春詠にも登場しなかったようだ。「香雨」ではないが、鷹羽狩行は毎日俳壇選者を四十年務めてきたが、それも令和二年十二月で辞退した。そんな中での「甘露集・白雨集・清雨集抄」は鷹羽狩行の数少ないメッセージだったのだが・・・。

 俳人協会六十年大会が今年の秋に予定されているが、その出席を期待している人も多いと思う。


鷹羽狩行論の行方

 鷹羽狩行の活動再開を期待しているが、逆にこうした時期にこそ、鷹羽狩行を語ってみてもよいかも知れない。上述のように「リスペクト狩行」は若い作家たちによる鷹羽狩行鑑賞だが、今までの鷹羽狩行の同世代の人の声も是非聞いてみたい。

 鷹羽狩行に関する鑑賞批評の最新は片山由美子の『鷹羽狩行の百句』(平成三十年ふらんす堂)でこれはコンパクトで読みやすい解説だが、もっと多種多様な批評を読みたいものだ。それにうってつけなのが、『鷹羽狩行の世界』(平成十五年角川書店)で、少し古い本のため句集も第十三句集『十三夜』までが対象だが、鷹羽狩行論だけで五百頁の圧巻である。その意味での、最新時点でのこうした論書が望まれるところだ。鷹羽狩行の関係者による第十九句集、第二十句集の上梓も今後行われるのだろうが、併せて『鷹羽狩行の世界』の続編を是非視野に入れて欲しいものだ。

 いろいろ異論もあるかと思うが、現代俳句協会を牽引したのが金子兜太であるとすれば、俳人協会を牽引したのは鷹羽狩行だろう。その証拠にこの二人だけが協会の名誉会長を務めている。虚子にも見られなかった空前絶後のことである。その一方の金子兜太は「海程」終刊決定後もいろいろな企画が登場し、最新のところでは昨年文芸評論家井口時男による『金子兜太 俳句を生きた表現者』の力作が刊行されている。こうしたことを鷹羽狩行についても期待している。

(以下略)

※詳しくは「俳句四季」4月号をお読み下さい

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