ソルトミル
アスパラガスよく知る犬に声をかけ
アスパラガスの畑へ立ちて腫れ瞼
アスパラガスの湿り軍手の重きまで
アスパラガス軽トラックに待たれゐて
アスパラガスのほのむらさきとソルトミル
・・・
今のマンションはペット可である。2匹までは飼っていいことになっている。でも、もう飼わない。
子供の頃、家にはいつも犬がいた。白い柴犬が大好きだった。死んだ時には大泣きした。茶色の犬もいたが家中で留守にしていた時に鎖ごといなくなっていた。誰かに連れて行かれたのだろうと、近所の噂になっていたが、分からず仕舞いだった。
猫が来たのは祖父が野良猫を家に入れたのがきっかけだった。晩酌の相手(?)のつもりらしく、傍にちょんと座っていた。もう成猫だったが、見ていると面白かった。絵を描くという宿題が出てこの猫をモデルにしたこともあった。白黒のブチだったから、勝手に茶色を加えて三毛猫にしたら、父にそれは写生とは言えないだろうとからかわれた。近所に猫を飼っている家があって、その家の女の子が時々抱いて来ていた。でも、この猫は多分子供が嫌いだったのだろう。というか、迷惑だったのではないか。私も抱きたくて仕方がないものだから、ついつい手を出すのだが、その抱き方が猫にとっては心地よくなかったのだ。よく引っ掻かれた。
それから月日が過ぎて……。
鯉のぼり猫をあかんぼ抱きにして としこ
という句ができた。10年以上も前の句だが、こういう抱き方をすれば、遠い昔に掻き傷を作ってくれたあの猫もおとなしくし抱かれてくれたかも知れない。
私が「あかんぼ抱き」していた猫は「ホタル」という名であった。次男が先輩から預かって、そのまま居座ってしまったものだ。
私が机の前に座ると、すぐさま机に乗ってきて邪魔をしてくれた。この通信の名は彼女の名前からとったものだ。16年生きた猫だったが、私の留守中に夫に看取られて亡くなった。ぼたん雪の舞う日だった。今でも思い出すと涙が出てくる。
もう、生き物は何も飼わない……。
それにしても、漱石先生は猫一匹であれだけの話をよくも作られたものだといつも思う。
(2022・4)
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