北川美美「面」掲載句集
今回から、「面」掲載の北川作品を紹介する。北川の最初の作品発表の場は「面」であったのでこれにより北川の全作品を展望できることになると思う。現在のところ「面」直近号は124号で、以後発刊されていないと聞いている。124号は編集人高橋龍氏がなくなったことによる高橋龍追悼号であり、北川美美が編集を行っており、その美美もなくなったため今後の動向は不明である。124号には、池田澄子、遠山陽子、福田葉子、三橋孝子氏らが名前を連ねている。
ちなみに「面」は西東三鬼の没後、昭和38年に創刊されたが、昭和59年に一時休刊。その後三橋敏雄指導の下に句会は存続した。平成13年三橋敏雄の死去に伴い、一時存続が危ぶまれたが、かえって第100号の復刊が図られた。以後高橋龍氏によって刊行が続けられたが、高橋龍氏がなくなったため北川の編集による124号の刊行に至ったものである。
北川は、「面」同人の山本紫黄の指導を受け、「面」に入会、その後「豈」にも参加し、「俳句新空間」の共同発行人を務めており、純粋な同人誌育ちであった。
「面」バックナンバーは池田澄子氏から提供を受けた。ご多忙の中を探索していただき感謝申し上げる。
面103「猫の砂」2005年4月1日
元朝に背骨の位置を確かめる
桜散り片づけられぬ猫の砂
鬼灯の音高らかに後の妻
(鬼灯の音高らかに後妻かな)
茄子の馬大事な猫を連れてきて
夜濯をひとりしたくて家を出た
地下水の波で舞う鳥熱帯夜
楔打つ二百十日の歯医者かな
生まぬ子の髪挿しを買う七五三
あきらめる夢に安堵の師走かな
面104「太郎治郎三郎」2005年12月1日
西東忌飛び級していく帰国子女
母の日と存じております御母様
鉄線花女三代左利き
宙吊りの赤き鉄骨朝曇
七夕や美男子指の冷えしまま
太郎治郎三郎家出て土用入
正座して干飯を食ぶ革命児
夏の河雨がざーざー降つている
あるだけのものぜんぶ食ぶ夜長かな
泣いている理由は何でもよくて秋
面105「音楽祭」2006年8月1日
着ぬままの喪服の家紋春近し
青き踏むイサムノグチの石の庭
水道局を右に曲がつて春動く
三鬼の忌 白きシーツの皺の中
こころから謝つていない葱坊主
駆け上る東京の夏音楽祭
大丈夫つねに前進ところてん
寝台の上に横たう天の川
霞が関上空雪雲通過中
非常口より東京タワー見え冬薔薇
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