2013年12月13日金曜日

【俳句作品】平成二十五年 冬興帖 第七

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     吉村毬子
空を棄て虹を啄む冬の鳥
白鳥の空を見ずして海を見る
冬舟を漕ぐ母の唄の隙間へ

     小津夜景
遊仙の香をほのぼのし鴨を食う
花むろやくさぐさの飢えかぐわしく
雪に残香 拭えざる血を知らず

     堀本裕樹
短日や「殉情詩集」捲りつつ
凍蝶の翅にうつすら夜汽車の灯
上京の訛りまだ濃しおでん酒

     堀田季何(「澤」「吟遊」「中部短歌」)
冬虹の足に透けてや白樺(しらかんば)
しろたへのスノーカクテル冬燈
魂魄も冬至生れの堀田季何
寒卵割らねば〈我〉が割れてしまふ
闇汁や牛(ぎう)豚羊鶏駝鳥

     外山一機(『鬣』TATEGAMI)
干し柿をしばらく撫づる別れかな
手にとりて鈴のごとくに冬の鮨
万両や洗ひあげたる父の膝

     望月士郎
「皹」と書いたら憲兵さんが来た
手袋のそれは小指の入る穴
姉さんと見ている鮪解体ショー

     田代夏緒
鼈甲の眼鏡の奥の冬ざるる
釦掛け違ふはるかな枯野より
湯豆腐のなかの闇には誰も触れず

     仲寒蝉
別々の芋焼いてゐる夫婦かな
冬空をすべる南京玉すだれ
北海の筋金入りといふ海鼠

     筑紫磐井
小春鎌倉昼の憩の曲流る
核心の一点に降る巴里時雨
刻々と雪に変はつて政変来

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