2022年2月11日金曜日

北川美美俳句全集10

 俳句新空間3号(平成27年12月)

  初鴉

年賀状むかしのことを白状す

餅花を掲げて歩く家族かな

重詰の中は仕切られ都かな

チリ紙l水I電池を積みし宝船

山景は定位置で見ゆ初鴉

寒空に遅れてとどく鐘の音

羊たちしずかに群れて初日受く

ストーブの小窓に青く小さな火

梅林野犬にしては毛並よし

スクランブルエッグは黄なり春近し


俳句新空間4号(平成27年8月)

  八月のうぐいす  

水引草夕べの雨のしずくかな

わたくしと鮎が川まで来て出会う

岩肌や鮎は骨まで透き通る

八月のうぐいすを聞く正午かな

初恋の我が前髪は汗に濡れ

目盛や人追いかけて道をきく

炎天下歩きて顔の堅くなる

梅干の肉こそよけれ旅人よ

湯の中で遠雷を聞く麓かな

扇風機もっとも強きとき背中


俳句新空間5号(平成28年2月)

  日当たる椅子 

電線のひかりかえして七日かな

松過ぎの日当たる椅子にいてひとり

ぬばたまの闇を裂けゆく鏡餅

来た道をそのまま戻る寒の空

氷上で古代の石を運びけり

ひとっずつ毛皮を縛る革ベルト

つぎっぎに囗尖らせてスケーター

山火事を追われし獣町に入る

春のみず硯の波止をはみだしぬ

立春大吉墨の匂いの烏帽子かな


0 件のコメント:

コメントを投稿