(現代俳句協会副会長・「兜太TOTA」編集長・俳人協会評議員 筑紫磐井)
「会員相互の信頼と良識によってその親睦をはかるとともに、俳句の伝統を基盤としてその正しい発展に寄与することを目的とする」
俳人協会が、現俳内の伝統の親睦団体に過ぎないという根拠は、「俳人協会清規」が廃止され、昭和41年4月に「俳人協会規約」が制定されても、その目的に全く同文が組み込まれたことからも引き続くことになる。
では民法に基づく公益法人となってこれは改善されたのであろうか。実は親睦が消えるとともにもっと恐ろしいことが起きてしまったのである。社団法人俳人協会は完膚無きまで定款の目的を変更されてしまった。
「社団法人俳人協会は、俳句文芸の創造的発展とその普及を図り、もって我が国文化の向上に寄与することを目的とする。」
「親睦」こそ消えたものの、最も大事な「伝統」がかけらもなく消えたのである。これは当時の文部省の認可条件として一業界に一法人しか認めず、「伝統」と明示することは他の俳句を排斥することになるため国是としてこれは認められなかったのである。結局、俳人協会は伝統俳句だけではなく、無季俳句の振興まで任務としている。
こうした前車の轍を避けたのが、日本伝統俳句協会であった。優れた官僚で政治家でもあったホトトギス同人会長大久保橙青が、文部省と緊密な連携を取り、有季定型を「伝統俳句」と呼び、これは「俳句」とは別の事業であると認定させるウルトラCをとった。日本伝統俳句協会の目的は次のようになっている。もはや、伝統は日本伝統俳句協会にしかない。
「有季定型の花鳥諷詠詩である伝統俳句を継承・普及するとともに、その精神を深め、もって我が国の文化の向上に寄与することを目的とする」
(「藍生」2月号より転載)
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