2022年2月11日金曜日

第21回皐月句会(1月)[速報]

投句〆切1/11 (火) 

選句〆切1/21 (金) 


(5点句以上)

11点句

冬館なつくことなく亀飼はれ(岸本尚毅)

【評】 亀を飼っている人は「亀も人になつく」と言うかも知れませんが、私は飼ったことがないので、やはりなつかないのかなぁと。冬館と合っています。──仙田洋子


9点句

焚火跡踏めばかすかに骨の音(篠崎央子)

【評】 命の哀れさを感じます。──仙田洋子


8点句

人日や赤子に手相らしきもの(渡部有紀子)

【評】 七草の節句に赤ん坊の爪切りを思い立ったのかも。開いてやってふと見ると、小さな掌にいつの間にかくっきりと筋が現れている。何やらわくわくする発見。──妹尾健太郎

【評】 いろいろと考えさせられます。すでに運命は決まっているのか。生き方により手相も変ってくるのか。──渕上信子


6点句

冬銀河蛹の眠る檸檬の木(仙田洋子)

【評】 取り合わせの語彙が多すぎる、「銀河」「檸檬」と色あわせが派手、という気もするのだが、蛹の中で丸まって春を待ついのちを思うと、冬銀河の大きさと一個ぐらいは残っているかもしれない檸の実の鮮やかな黄色も目に浮かび、この世のすべてが愛しくなる。──堀本吟


痛くない死に方マフラーの巻き方(望月士郎)

【評】 澤田和弥を思い出さずにはいられない。澤田は6年前に自死した。亡くなる直前の句が、「マフラーは明るく生きるために巻く」であった。あまりにもぴったりした句で、事情を知っている人の句かと思った。それ以外を想像できなかった。──筑紫磐井


美美忌来るむらさきの朝あをき夜(依光陽子)


人絶えておほつごもりの夜の雨(内村恭子)

【評】 いかにも「おほつごもり」らしいですね。──仙田洋子

【評】 しんみりと俳人の眼を感じる。──依光正樹


5点句

白息の中にラグビーボール立つ(中村猛虎)

【評】 立てられたラグビーボールに緊張感の高まってゆくさまが想われました。──青木百舌鳥

【評】 季重なりという声もありそうだが、白息が主、ボールが従と考えたい。これからボールを蹴ろうとセッティングしている人の息が、立てられたボールに当たる緊張の一瞬を描写した。周囲の状況は何も描かれず粋とボールのみ、この単純化ゆえに成功している。──仲寒蟬


(選評若干)

ピサの斜塔ただ一本のつくづくし 3点 松下カロ

【評】 ピサの斜塔と一本のつくづくしの配合美。動詞がない分、読み手は自由にイメージ出来る。幾何学的なシュールな絵画が浮かんだ。──山本敏倖

【評】 すっきりした構成だが、いじらしい一本の「つくづくし」(土筆)の存在感が大きく亦けなげである。──堀本吟


すっと抜く大根地に棲む水のいろ 3点 真矢ひろみ

【評】 とれたてのダイコンの透明感と冷たさが言葉の質感になっている、──堀本吟

【評】 大根の白さ透明感を〈地に棲む水のいろ〉と捉えた詩情に感動しました。──篠崎央子


三面鏡凍蝶永久に凍てしまま 1点 仙田洋子

【評】 春になっても決して溶けることはない凍蝶。その光は永久に三面鏡の中で不規則に反射し続ける。とても不思議な魅力のある句。──依光陽子


とんとんと危ふき道や絵双六 3点 西村麒麟

【評】 とんとん拍子に進んで上れそうなのに、さいころの目によって落とされることも。確かに危ういのは人の世の写しですね。季題効果的と存じます。──小沢麻結

【評】 お江戸のボドゲを詠んで、どうやら空想句だと察しますがそれゆえにと云うべきか、句調が、現代離れしている処に、魅力を覚えます。元禄調だ天明調だ天保調だと断ずる眼力は具えていませんけれど何しろ、おっとりとした滑稽味が、非゠現代的。──平野山斗士

【評】 一回休みがあったり、振り出しに戻されたり、なるほど「危ふき道」です。「とんとん」と何気なく進むうちに危険が待ち構えているというのは、人の世にも通じていて含蓄ある表現だと思いました。──前北かおる


場つなぎの鯛焼き顔を失へり 2点 水岩瞳

【評】 選  おやつを食べての「場つなぎ」でしょうか。──岸本尚毅


塀といふ塀に人乗り初日の出 4点 平野山斗士

【評】 ホント?と聞きたくなるけど、法螺話でも面白い。──仙田洋子


初夢の虎が座敷をうろうろと 4点 小林かんな

【評】 お目出度そうなのに怖い夢ですね──小沢麻結

【評】 「やばい」句ですが、面白い。──仙田洋子


初会議首振るだけの虎である 3点 飯田冬眞

【評】 思わず笑った。──渕上信子

【評】 寅年生まれなのに、今年も会議では意見が言えず頷くだけ。ユーモラスで,ペーソスもある。──水岩瞳


砂遊びセットの一つ凍て出ずる 2点 妹尾健太郎

【評】 砂場に忘れてきたきたおもちゃのセット。掘り出すとそのうち一つだけが凍っている。よくあるスナップだが、が、特別な事態でもある、というかすかな不安も詠みこんでいる。──堀本吟


行く河は絶えず騒がず顧みず 1点 佐藤りえ

【評】 選  箴言風でもありますが、じっさいの河の景も思い浮かべたい。──岸本尚毅


ゑびす屋の客夭夭と獅子舞と 2点 千寿関屋

【評】 選  人力車と解しました。──岸本尚毅


私の棲むわたしのからだ雪明り 4点 望月士郎

【評】 雪の明かりのなかに置く自分の姿、もしや、素裸なの姿なのではないだろうか?これはどうでもいいことだが、自らを鋭く意識させる雪の明るさ。自我の自律性というべきか、「私」「わたし」の使い分けが、ナルシスティックな抒情性が嫌味なく吐露されている。──堀本吟


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