2021年5月14日金曜日

【新連載・俳句の新展開】第12回皐月句会(4月)[速報]

投句〆切4/11 (日) 

選句〆切4/21 (水) 


(5点句以上)

10点句

花ふぶき気づけば地図の外にをり(渕上信子)

【評】 折からの風に一瞬目を覆うような花ふぶき。気づけば自身の魂は現世の地図を離れ、その外に。まさに花の巻き起こす妖しの世界。──山本敏倖

【評】 自然公園を漫ろ歩きするうち、手持ちの地図に記されていない場所にいま立っているらしいな。浮かれ歩きの挙句に異界へ踏み込んだような、桃源郷の趣があります。思い返せば花吹雪のために一瞬視界を奪われたのがその越境の折であったか、そうかも知れませんね。〈地図の外〉と縮約した云い表しように感服いたします。──平野山斗士

【評】 地図の外がいつの間にか知らない道に、くらいの意味なのか、それとも異界に来てしまったということなのか。花吹雪の中にいるとこのような気分になる。──仲寒蟬


9点句

だんだんに耳だけになる春炬燵(依光陽子)


7点句

春の泥掻いて馬の目静かなり(小林かんな)

【評】 「目は心の窓」という。〈馬の目〉に焦点を当て〈静かなり〉と言い切ったところが良い。「馬が何を考えてるかは前脚と鼻息でわかる」とは馬を飼っていた北海道の爺ちゃんのことば。〈春の泥〉を掻く馬の躍動感が伝わる。──飯田冬眞

戻り来て雨の匂ひの恋の猫(内村恭子)


6点句

春暁や夢のうねりを象わたる(真矢ひろみ)


5点句

朝桜この制服に袖とほし(前北かおる)

春の途中で転校生となりぬ(近江文代)

【評】 普通は学期当初に転校してくるものだがこの子は半端な時期にくる。こういう子は得てして、途中で転校してゆくものだ。風の又三郎のように。穏やかな春の日でなく、春疾風が吹いているといい。──筑紫磐井

三月十一日借景は決めてある(山本敏倖)

【評】 私が決めているその日の借景と、貴方のそれはきっと同じでしょう。──堀本吟

ゆったりと昼をかなしむ袋角(堀本吟)


(選評若干)

花遠し電車かぎろひつつ来たる 2点 岸本尚毅

【評】 花の頃のかぎろいながら入ってくる電車の感じがすーっと入ってきた。──依光正樹


青楓考える人立ち上がる 3点 田中葉月

【評】 ロダンの彫刻『考える人』が立ちあがるというパロディでしょうか。それとも、考える人へのエールかなとも。今の世の中、本当に考えている人の言葉が聞きたいし、そういう人にこそ立ち上がってほしいと思っています。そして、それは自分へのエールかも。──水岩瞳


まず顔の熱くなる酒春の蟬 3点 中山奈々

【評】 実際に春の蝉を見たことがあっただろうか?ないのかもしれない。ないのに鳴いているのを蝉だとするのは酔いの様にこの句に惹かれたもののその理由を説明し難く、──妹尾健太郎


シート全部倒して春の潮を聞く 4点 小林かんな

【評】 春の潮の心地よさ。贅沢な一人きりの時間──中村猛虎


パーに勝つグー早蕨が地を割いて 1点 仲寒蟬

【評】 春の力強さ。「パー」が地面、それを突き破ってグーっと「早蕨」が出てくる感じ。──渕上信子


海女が来て深層水を口うつす 2点 妹尾健太郎

【評】 海女は海神の娘に相違あるまい 深層水とは蓬莱の水であろう ありがたや、老化した命を再生せむと…──真矢ひろみ


鷹化せし鳩の首振りかくも下手 2点 仲寒蟬

【評】 そういえば、怪しげな鳩がいますね。実は鷹だったと知り納得。──渕上信子


揚雲雀みな青かりき若かりき 3点 渕上信子

【評】  「みな」と思える仲間が、当時は「揚雲雀」の行方を目で追うように、方向性を共有していたのでしょう。美しい「あの頃」を懐かしむ気持ちを清々しく思いました。


花の枝に大跨りの頭陀袋 3点 平野山斗士

【評】 なんとなく面白い写生句。──渕上信子


鴨残る酔ひ覚まし程度に残る 2点 中山奈々

【評】 心の酔いを覚まそうとする時、ふわふわと何かが抜けてゆく。だけれどもまだ酔っている。池の鴨も気が付けば数は減ってはいるが、まだ騒いでいる。酔い覚ましの微妙な淋しさに惹かれた。──篠崎央子


伸びてゐる爪の不揃ひ放哉忌 4点 近江文代

【評】 うまい!の一言に尽きます。──仙田洋子


落し穴シロツメクサをもて隠す 4点 松下カロ

【評】 春のいけない悪巧みですね。──佐藤りえ


水芭蕉見るための椅子朽ちてをり 4点 西村麒麟

【評】 雨ざらしの椅子は朽ちているのですが、枯れ色の中に透明な水の流れと花の純白が浮かび、より清浄な空気感を生んでいると思います。湿原を歩きたくなりました。──小沢麻結


母は名を忘れ菜の花蝶と化す 4点 飯田冬眞

【評】 「A」音の連続と2回の「HANA」に慰められるようだが、やはり切なく寂しい・・・──夏木久

【評】 かなしいのに光が溢れていて、救いすら感じられる。季題が全体を包んで一句を昇華させている。──依光陽子


告げられぬ理由と根拠残り鴨 1点 水岩瞳

【評】 結論のみがあり、眼前には残り鴨がいる。──青木百舌鳥

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