2021年5月28日金曜日

【中西夕紀第四句集『くれなゐ』を読みたい】17 ゆとりの句集  永井詩

 私は作者のおしゃれで個性的で勢いのある第一句集「都市」が大好きである。

 そして、詩情に溢れた第3句集「朝涼」のファンである。

 だから、「くれなゐ」を読んだ時は、少し物足らなかった。しかし読むうちに作者の人生への自信をバックにした、色彩豊かな、ゆとりの句集だと分かった。

 リズムよく、自然体でわかりやすい句が多い。作者の句は、描写力があるので、すすっと読み進めることから、最初は安易な判断をしてしまったことに気付いた。

 藤田湘子に学んだあとで、写生力を学ぶために、宇佐美魚目のもとに通った努力の賜物であろう。

 そして、句集「都市」を再び読むとあんなに好きだったのに物足らないのだ。

 すでに著名な方々が句評をかいていらっしゃるので、私は「蛇」「猫」「蜂」の句を取り上げたい。

 作者は帯文にも「小さなものたちの命に寄りそう」と書いている。上記の蛇、猫,蜂は作者の好きなものである。巳年生まれであり、猫を飼い、そしてなぜか蜂好きである。しかし残念ながら、蜂の句はなかったが。


  口開けて蛇抜け出でし衣ならむ

まるで作者が蛇になり、脱皮の時の蛇の思いに心を寄せているようだ。


  穴惑見しも秘事とす湯殿山

 湯殿山の決まり事と穴惑いの出現を面白く絡めている。縁起がよさそうだ。


  青大将逃げも隠れもせぬ我と

 人を見れば姿を消すはずの蛇が、なぜか大勢の人が通る横で、じーとしていた。作者はそういう蛇に対峙しているのだ。


  山楝蛇木を移らむと空飛べり

 流石、蛇好き!なんと珍しいシーンに出会えたのだろう。飛ぶことのできる蛇をたたえているようだ。


  蛇踏んで1日浮きたる身体かな

 浮きたるが曲者である。作者の蛇好き極めたりである。


  読む文に猫の居座る冬日和

 やれやれと言いながら、猫に話しかけている作者が見える。読む文という柔らかな言葉や、季語によって猫への深い愛情を感じる。


  金魚屋の猫の名前の悪太郎

 いやー本当ですかと言いたくなる。お笑いみたいである。猫のおやつは屑金魚?


  捨猫に日数の汚れ月見草

 哀れである。日数の汚れとあるから生まれたてではないだろうが、きりきりと心の痛む作者がいる。


  枯れを来て猫も話があり気なり

 猪突猛進の犬と違って、猫は思慮深げだ。

 その猫が枯れから現れると何か摩訶不思議なことを言いだしそうである。

 

 以前は、作者の句のイメージは、どちらかというと、女性というより中性的な句柄だという気がしていた。その点「くれなゐ」は作者の女性である面が出ていると思う。だから、少し雅で綺麗すぎるところもある。次回は進化し続ける句の中に、時事俳句や尖がった句やドロドロとした句も見たいと思う。

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