2014年6月13日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年 花鳥篇 第三









   平成二十六年 花鳥篇 第三

     花尻万博
母の家造花に満ちて若葉雨
薇を入れてすまし見飽きたり
定型の言葉透けつつ薊かな

     下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)
羽抜鳥何を怖るることもなく
紫陽花のきのふの色を水の上
夏蝶や一枚の葉の朽ちるまで

     岬光世 (「クンツァイト」「翡翠」)
どこからが風や莟や花みづき
葉桜や上人像の名を忘れ
夏きざす大樹は雲を歩かせて

     依光正樹 (「クンツァイト」主宰・「屋根」)
どこまでもいけると思ふ著莪の花
街に道寺に径や花樒
ひらきては潮を臨むひからかさ

     依光陽子 (「クンツァイト」「ku+」「屋根」)
抱卵期影のひとつとなりて啼く
借景として姫著莪の喪の如く
鈴蘭や硝子隔てて内と外に

     藤田踏青
類語を嫌いすねるばかりの花筏
逆走の片眼に荒野と花菜畑
寂光土にはいつも山鳩が
逆縁なれば時鳥など知らず
車椅子にも九尺藤の乱れ文字

     林雅樹(「澤」)
新樹風に揺れ駅前のロータリー
夢遊病者新樹に呼ばれ木戸を出づ
栗の花匂ふ通りに出て叫ぶ

     中西夕紀
東(ひんがし)の月まだ淡し生ビール
神輿来る暗渠に橋の名を遺し
水貝を出せう貧交に淡交に

     津髙里永子
青芝やザッケローニと母言へて
駅薄暑犬の里親募る声
チューブ入り病院食や青葉冷 

山田露結(「銀化」)
紫陽花のこれは造花でこれも造花
リア充とは空しづかなる罌粟の花
命などかけてはならぬ冷奴

     小林苑を(1949年東京生まれ。「里」「月天」「百句会」「塵風」所属。句集『点る』2010年上梓。)
大南風姿の見えぬものばかり
捨て鉢な金魚尾鰭を叩きつけ
黙祷をしてその後の海開き

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