2013年9月20日金曜日

【俳句作品】 平成二十五年 秋興帖 第三

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      小澤麻結(「知音」)
   鶴岡
色変へぬ松を主と御隠殿
萩の戸や人声とぎれとぎれ洩れ
落蝉のことり大名屋敷裏


      陽 美保子 (「泉」同人)
   ザルツブルク
山越えの牛歩まする朝の霧
新涼の湖をちりばめ歌の国
銀漢や聖水盤に水盈ちて


      岬光世(「クンツァイト」「翡翠」)
へなへなとなるまで笑ひ秋高し
鳳仙花ドッヂボールのたけなはに
透きとほること傷むこと水蜜桃


      依光正樹(「クンツァイト」主宰、「屋根」会員)
露の世に花葛ちよとちがふ色
街の子の隠れて遊ぶ真萩かな
水引を蹴り飛ばしてや川へ急ぐ


      依光陽子(「クンツァイト」「屋根」)
かんばせに紫煙流して鯊を釣る
鯊の来て鯊の驚く旱汐
秋蝶や影をとほくに置きながら


      下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)
こゑのしていまも社に露の猫
瓜の馬寄り道をして帰られよ
吾の影踏んで吾ゐる魂祭


      早瀬恵子 (「豈」 同人)
風立ちぬ月見る月の汝(なれ)が世ぞ
青猫の酔うたる月や屋根も青
月はやるあなた好みに風の舌


      藤田踏青(「層雲自由律」「豈」同人、「でんでん虫の会」代表)
夢の青さをぬけきれず遠ひぐらし
句読点をふるわせ細る落し水
蚯蚓鳴く擬音の中に殉教者
驟雨とや人語ふさぎて魂迎
返信のコンマにとまるツクツクホウシ



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