2024年4月12日金曜日

【抜粋】〈俳句四季2月号〉俳壇観測253・昭和99年の視点で見た歴史 ――昭和俳句史・平成俳句史・令和俳句史をたどる  筑紫磐井

 無事、令和6年を迎えた。ところで、令和の前に平成が31年続き、さらにその前に長い昭和時代があった。我々の歴史意識は、この昭和・平成・令和でぶつんと切れていて、余り整理された時間の流れが感じられずにいる。特に昭和は今もって素晴らしい時代・悲惨な時代として様々に語られるが、それだけ存在感が強い時代だった。しかし、平成・令和はそれは希薄だ。そこで昭和を基準に考えてみると、今年(令和6年)は昭和99年に当たることが分かった。さてこの昭和俳句史、戦後俳句史はどのようなものであったか。


昭和俳句史・戦後俳句史の試み

 青木亮人氏が「現代俳句の研究を思いたった時、或る困難に気づくのではないか。当惑と言ってもよい。まず、通史が存在しないのである。「現代」を昭和期以降として、昭和期全体を俯瞰した俳句史が見当たらない。特に戦後俳壇は現代俳句協会、俳人協会、日本伝統俳句協会に分裂したが、これらを「三派鼎立時代」と見なすようなーーあるいは見なすべきではないとする――史観が存在しないのである」(『昭和文学研究』(平成21年)の「研究動向・現代俳句」)と指摘している。確かに長く華やかだった昭和俳句史をだれもまとめて語ってくれていない。探してみると次のようなものぐらいであろうか。


〇『戦後の俳句 : <現代>はどう詠まれたか』楠本憲吉編著. 社会思想社 昭和41年(終戦から現代俳句協会の分裂後まで)

〇昭和俳壇史 松井利彦著 明治書院 昭和54年(戦後初期から虚子没年まで)

○『鑑賞現代俳句全集』(昭和56年立風書房)巻1「昭和俳句史(二)」坪内稔典[戦後から兜太・重信まで]


 しかしこれだけでは十分ではない。やっと昨年、川名大『昭和俳句史―前衛俳句~昭和の終焉』(令和5年8月角川文化振興財団刊)が出たが、それでも昭和30年代から昭和末年までというやや中途半端な切り口となっている。特に、昭和以後の俳句史が存在しないところが残念である。特色としては新興俳句系の歴史が多いことだ。


平成・令和俳句史(以下次号)