2021年12月17日金曜日

第19回皐月句会[速報]

投句〆切11/11 (木) 

選句〆切11/21 (日) 


(5点句以上)

9点句

闇汁の闇甘くなり辛くなり(西村麒麟)

【評】 闇に味を感じるおもしろさ。──中山奈々


ふるさとは人の厚さの掛布団(近江文代)


7点句

マシュマロの弾力水鳥の浮力(近江文代)

【評】 マシュマロと水鳥。全く違うものなのに、対比させて句が立ち上がっていますね。──仙田洋子

【評】 ちょっと拍子抜けな位、堅そうで柔らかいものや重そうで軽いものにその力のはたらきの面白さを発見しています。──妹尾健太郎

【評】 マシュマロ食べながら、水鳥を見ている。いい日。──中山奈々


6点句

日の沈むまでの手すさび種を採る(仙田洋子)

【評】 「手すさび」が巧み。この一言にいろいろな情報が詰まっている。この人にとって種を採ることは毎年行っていることで、特別なことではないのだろう。なんとなくそこに居て、なんとなく目について、なんとなく手が動いて…といった風。まず思い浮かんだのが朝顔。手の中で揉んだ時に薄い殻がパリパリと割れる感じや、そのあと粉々になった殻を息で吹き飛ばすところまで見えて来た。そんな風に私も「日の沈むまでの手すさび」で種を採っているなぁ、と強く共感。──依光陽子


寒き日々造花をいくつ並べても(依光正樹)


5点句

文化の日満艦飾のピザが来る(松下カロ)

【評】 「満艦飾」という言葉がいいですね。ピザの様子が目に浮かびます。──仙田洋子

【評】 「全部のせ」というやつでしょうか。華やかさがあります。──佐藤りえ


夕焚火文字なき民の謡ふ神(渡部有紀子)


夜業の灯猫は液体かもしれぬ(中村猛虎)

【評】 「猫は液体」という発想が好きです。──仙田洋子


コンロの火ぐるりと回り冬に入る(飯田冬眞)

【評】 寒さを感じた作者はコンロに火つけると火がぐるりと回り、その時に冬を感じた様子が目に浮かびます。──松代忠博


(選評若干)

白鳥が来るそらいろの方眼紙 4点 望月士郎

【評】 中七下五が新鮮でした。白鳥の白と空色が美しいですね──小沢麻結

【評】 白鳥が来る冬の空。手元にはそらいろの方眼紙。白鳥の飛来してくる経度緯度をイメージしているのだろう。ちょっと景が見えすぎるきらいはあるが、美しい。──山本敏倖


秋遍路灯台守もこの道を 1点 岸本尚毅

【評】 〈灯台守〉の一語は効き目抜群、心憎い言葉選びと瞠目します。果てなく巡る時のなか、遥かなる寂しさ、といった情趣が醸されています。〈を〉と云いさした下五もまた相乗効果を挙げていると思われます。──平野山斗士


素うどんがきつねに化けて神の留守 4点 仲寒蟬

【評】 ただきつねあげを載せただけなのに、「化けた」との大袈裟に惹かれた。神の留守の良さと合う。──中山奈々


AIのまどろむ夢に雪ぼたる 2点 真矢ひろみ

【評】 詠みにくい素材に挑んだ意欲を買います。──仙田洋子


双眸に須臾たくはへて夜の鹿 1点 佐藤りえ

【評】 「須臾」・・これは、瞬間とかその時限りという意味の数量の単位だという。「夜の鹿」は、検索してみると、目をつむってあるいは薄目を開けて眠るようだ。網膜に瞬間ごとに闇が張り付いているという想像は、ありえないほどトリビアルな状態である。

しかし、この一句はそのことを「須臾たくはへて」というすばらしい言葉(認識)で形容した。この受け止め方にリアリティを感じるのも、昼間の彼らの、ゆったりとまたたうっとりしてあの、目ざめながらながら眠っているような瞑想しながらも何も考えていない無為のまなざしを観ることが多いからである。──堀本吟


中華屋の自販機上にある冬菜 3点 青木百舌鳥

【評】 些細な光景で、よくある日常の一コマ。ただ、何かしら気になる 夜寝ようとするときに何故か思い出されてしまうもの。数年後にどこかで見た光景だとデジャブのように思い出すもの。こういうものも人の心を支えているに違いない。──真矢ひろみ


どたばたと降り来る二階鮟鱇鍋 3点 松代忠博

【評】 これは家庭の情景ではなく、鍋物屋の風景であろう。やや体重超過の仲居が鍋を持ってくるのだが、ちょっと不細工な方が鍋がうまく感じるものだ。──筑紫磐井

【評】 下宿の子を誘ったら。あらまあ。──中山奈々


団栗や寄り目かなしき忿怒仏 2点 岸本尚毅

【評】 かなしは「悲しい」ではなく趣きがある。興味深いの意に思える。団栗との取り合わせもぐっと惹かれる。──依光正樹


秋夕焼け鳥には見ゆる鳥の国 4点 田中葉月

【評】 生物の種ごとに、世界は違って見えるのでしょう。人間は、自分に見えているものだけが世界だと思いがちですが。──仙田洋子


冬耕のはや日の廻りきたるかな 1点 小沢麻結

【評】 山の畠か、粛々と行われている孤独な仕事の様子が想われました。──青木百舌鳥


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