"紅の挽歌”の選句を送ります。
少年のどこを切っても草いきれ
多動児の重心にある向日葵
この空の蒼さはどうだ原爆忌
開戦日父は螺子売るセールスマン
部屋中に僕の指紋のある寒さ
たましいを集めて春の深海魚
三月十一日に繋がっている黒電話
朧夜の一筆書きのカテーテル
すすきの穂ほらたましいが通った
ポケットに妻の骨あり春の虹
猛虎氏は、およそ俳句に使われない“名詞”をいとも簡単に、五七五に紡ぐ。本選でも、多動児、 重心、螺子、指紋、たましい、深海魚、黒電話、カテーテルとオンパレードだ。
いずれの句も意外性とか"よく、気が付くな”とか、感性の素晴らしさを賞賛するばかりだ。
すすきの穂ほらたましいが通った
はすすき、たましい、とくれば、風を足せば普通に一句となりそうだが、“ほら”と口語にすることで、何か爽やかな感がした。平凡に見えるが、広がりのある、不思議な詩情が有る。
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