いつもお世話になっております。 (現在BLOG「俳句新空間」に連載中の)自分の原稿(「寒極光・虜囚の詠」)について、2点質問させてください。 よろしくお願いいたします。 <質問> ①文章の前半にかなりのボリュームで、大東亜戦争の歴史や抑留体験者の体験談をとりあげていますが、このような形式で良いのか、他に良い整理の仕方があるか教えてください。 ②歴史的資料の引用や句集の作者の体験談の引用もそのままをのせております。これについても、整理した書き方を教えてください。
大関博美(のどか)
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【参考】
寒極光・虜囚の詠~シベリア抑留体験者の俳句を読む(目次)
(○の数字は連載の通し番号、BLOGの「のどか」で検索すると逆順で表示)
https://sengohaiku.blogspot.com/search/label/寒極光・虜囚の詠
第1章
Ⅰ.はじめに ①
Ⅱ.シベリア抑留への歴史 ②
Ⅲ.シベリア抑留語り部の体験談
(1)ソ連軍の侵攻 ③
(2)武装解除 ④
(3)ダモイ・トウキョウ ④
(4)シベリアへ ④
(5)収容所 ⑤
(6)極寒 ⑤
(7)食事と飢え ⑤
(8)身体検査と労働等級 ⑥
(9)伐採作業 ⑥
(10)自動車積載作業 ⑥
(11)埋葬 ⑥
(12)政治教育 ⑥
(13)引き上げ・帰還 ⑦
(14)シベリア抑留体験者の体験談をまとめて ⑧
第2章 シベリア抑留俳句を読む
Ⅰ.小田保さんの場合 ⑨~⑪
Ⅱ.石丸信義さんの場合 ⑫~⑬
Ⅲ.黒谷星音さんの場合 ⑭
Ⅳ.庄子真青海さんの場合 ⑮~⑯
Ⅴ.高木一郎さんの場合 ⑰~⑳
第3章 戦後七〇年を経ての抑留俳句
Ⅵ.――百瀬石涛子さんの場合 ㉑~㉖
第4章 満州開拓と引き上げの俳句
Ⅶ.――井筒紀久枝さんの『大陸の花嫁』を読む ㉗~
第5章 シベリヤ抑留俳句・満州開拓と引き上げの俳句を読んで(未執筆)
【筑紫磐井の回答】
(1)大関さんの論文につては既に連載で30回に及んでおり、これだけの筆力のある人は多くないと思います。講座の初回で申し上げたように、論理的な評論である必要はあまりなく、「血沸き肉躍る」文章が評論では必要であると思います。これだけ長編の文章を書けると言うことは、作者の思い入れが強いことですから、「血沸き肉躍る」評論となる第一条件は満たしています。繰り返しになりますが、俳句と違って(?)論文の場合は継続する膨大なエネルギーが必要で、それに関しては申し分ないと思います。長い文章さえあれば、後は見直し・添削・書き直しの整理を繰り返せば一流の論文にすることは可能です。
(2)ちなみに、大関さんのテーマ(抑留・引揚者の俳句)に関しては、これらのテーマについて取りまとめた俳句評論として、手近なところでは、阿部誠文氏の単行本『ソ連抑留俳句』(第16回俳人協会評論賞受賞)『満州・中国俳壇』『朝鮮俳壇』『台湾俳句史』等、「俳句文学館紀要」所収の論文「キメラの国の俳句」(9号)「欧露抑留句集『大枯野』について」(10号)「朝日新聞に見る戦時中の俳句」(14号)等やそこに付された参考文献があるようですのでご覧になったらよいでしょう。大関さんは色々な文献を引用されていますが、それらを踏まえたうえで、「評論」としてどのようにまとめるかが分かると思います。論者それぞれ関心は違いますので、必ず読まなければならないわけでもなくそこから鉄則を導き出す必要もありませんが、まとめるにあたっての参考にはなると思います。この種のテーマを取り扱うための勘どころのようなものが見えてくると思います。
(3)以上は一般的なコメントですが、少し細かい点を申し上げます。
①問<文章の前半にかなりのボリュームで、大東亜戦争の歴史や抑留体験者の体験談をとりあげていますが、このような形式で良いのか、他に良い整理の仕方があるか教えてください。>
答:基本となる資料(聞き語りや回想録)は大事ですが、それが事実であるかどうかは吟味した方がいいと思います。話者は、思い違いをしたり、場合によってはうそをつく場合さえあります。いくつかの資料を併行して扱えば自ずと真実は浮かび上がるものですから、(2)で述べた関連資料もその意味で役に立ちます。たった一つの真実が面白いのではなく、あれやこれや論者が思い迷うプロセスも面白いと思います。私などは、たった一つの真実などあり得ないと思っています。
②問<歴史的資料の引用や句集の作者の体験談の引用もそのままをのせておりますこれについても、整理した書き方を教えてください。>
答1:まとめ方について申し上げます。30回にのぼる長編ですので切れ目が必要です。いくつかのパートにまとめて見て、ひと休止したところで言いたい小結論をまとめてみたらいかがでしょう。そこにまとまり切らないあふれ切った原資料部分はたぶん削除しても支障はないでしょう。それをすることによって文章そのものも引き締まると思います。そしてこうした小結論をまとめると、この論文の結論、大結論となるでしょう。
答2:大関さんの目次で言うならば、第1章(Ⅰ~Ⅲ)と第2章以下(特にⅥ、Ⅶ)の対比は興味深いと思います。第1章の歴史的事実、客観的事実はそれだけで研究書として価値があると思います。ただそのためには、①で述べたようにいくつかの資料を合わせて検証することが望ましいと思います。
第2章以下はもう少し主観的感想が混じると思います。したがって、両方が相まってうまく融合すると傑作になる可能性はあります。
いずれにしろ、誰にでも書け得るものではない、大関さん固有のテーマが浮かび上がると思います。ご精進を期待します。
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