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依光陽子(「屋根」「クンツァイト」)
道枯れて人揺れてゐる影や影
繪の中へとび込む人や賀状来る
執拗に蜜柑の白を剥く汝よ
安らかに鷹を眠らす木の声は
くちばしの十全にして大旦
山田耕司(「円錐」同人)
黒松や箒に雌も雄もなく
春泥を舟のかたちにして去れり
逢着はたちしよんべんで掘る凍土
杉山久子(「藍生」「いつき組」)
昇り龍背におどらせて初湯かな
一気飲みする珈琲牛乳
草の芽のひかりスキップ加速して
小沢麻結(「知音」同人)
日銀短観データを拾ひ初仕事
塔の如枯木あの辺りがリンク
寒紅のなほ揺れてゐる心かな
月野ぽぽな(「海程」同人)
元旦の空ていねいにやぶきます
夕暮れはうすむらさきの手毬唄
初夢にマンハッタンの音まじる
小野裕三(「海程」「豆の木」所属)
郵便車平らかに行く七日かな
人の日の婆はひとまず鎮座する
餅花に届く掌ありにけり
榮 猿丸(「澤」)
嫁が君極楽鳥の餌皿に来
起震車の卓の下なり着ぶくれて
福寿草ひと訪ひくればテレビ消す
福永法弘(「天為」所属。「石童庵」庵主。)
石童山粛然としてけさの春
雪を催す庵の門松
刻既に鶏はまだまだまどろみて
堀本吟(昭和17年犬山市生(戦中派)。松山市育ち。生駒市在住。「船団」を経て「豈」同人。「風来」同人。大阪で超ジャンル「北の句会」を存続十年。評論集『霧くらげ何処へ』(1992年。深夜叢書)。句集を出せと言われつづけているのにちっともまとまらない。)
昭和26年天狼賞受賞の津田清子を思い『無方』までの道のりを讃える
歳旦や「天狼」一月号巻頭
晴着は賞の白きセーター
復た往かん砂漠も初日照るならん
山崎祐子(「絵空」「りいの」「万象」)
山崎祐子(「絵空」「りいの」「万象」)
鳴き砂に拾ふ流木二日かな
人日の丸大根を抜きし穴
神の井の碧きより汲み水祝
小林千史
初旅の涙わかれてきしごとく
酔うてゐて声かすかなり七福神
初夢で「きみと話がしたいのだ」
陽 美保子(「泉」同人)
初春や菓子の銘なる紫野
袖の乱せし福笑の目
鳥雲に漁網一枚繕ひて
松尾清隆(「松の花」同人)
別冊の付録のやうに粥柱
傀儡女の箱の中より愛別離
別珍を天鵞絨と呼ぶ松の内
柴田千晶(「街」)
胡麻油の底に生家の初明り
餅花を背中に挿して叔父来る
葬列の海まで続き冬うらら
堀田季何(「澤」「吟遊」「中部短歌」所属)
神いづれ白骨化する宝舟
どの神も嗤笑してをり宝舟
瓊玉も神も模造品宝舟
宝舟船頭をらず常に海
宝舟瓦解しぬふと日の射せば
宝舟すこしはなれて宝船
宝船しろがね積むやくがね尽き
懇ろにウラン運び来宝船
宝船沈めて渦やうすびかる
外山一機(『鬣TATEGAMI』所属)
平成二十二年歌会始御製歌
木漏れ日の光を受けて落ち葉敷く小道の真中草青みたり
児守れ
霊の飛花
梨を享けて
御乳は慈救
平成二十三年歌会始御製歌
五十年の祝ひの年に共に蒔きし白樺の葉に暑き日の射す
夷ぞと
兄の胆は
妃の徒死に
喪に撒きし
平成二十四年歌会始御製歌
津波来し時の岸辺は如何なりしと見下ろす海は青く静まる
頭並み
腰解き
乃木氏へ廃家
躰仁
平成二十五年歌会始御製歌
万座毛に昔をしのび巡り行けば彼方恩納岳さやに立ちたり
満座舞ふ
二夫が潮路の
叫く
流刑は
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