2024年9月13日金曜日

第49回皐月句会(5月)[速報]

投句〆切5/11 (土) 

選句〆切5/21 (火) 


(5点句以上)

8点句

グラスみな裏返されて夏きざす(仲寒蟬)

【評】 俳句を、言葉で作ると捉えるか、素材で作ると捉えるか、によって、まるきり評価が逆転する句と見ます。謂わば、濃い味を好むか薄い味を好むかの嗜好の違いですね。個人的好みをなるべく排しての選を心掛けるなら、こうした恬然たる句に敬意を表します。──平野山斗士


夜店の灯まっ赤なものを舐めている(望月士郎)

【評】 林檎飴か何かなのだろうがこう書かれると血でも舐めているかのようで恐い。──仲寒蟬

【評】 金魚、りんご飴、風車、帯、水風船、綿菓子、旗幟・・・赤を引っ張り出して、いろいろな記憶へ連れ込まれる?それも舐めるように・・・!──夏木久


7点句

おむすびの中は未知なるみどりの日(松下カロ)

【評】 みどりの日はかつて昭和の天皇誕生日からの名称変更があり、昭和の日との置き換わりもあり、名実が揺らぎながらも平日に返されずに存続している。ピクニック日和に恵まれて芝生に転げ出た沢山のおむすびに目移りする。お目当ての具入りは何れであろうか。──妹尾健太郎

【評】 未知というのはちょっと怖い。みどりの日だから何かの草や葉なのかもしれない。食べられないことはあるまい。──仲寒蟬


6点句

炎天の真ん中昏し裸馬(田中葉月)


5点句

肘掛けに肘やはらかき五月かな(依光陽子)

【評】 肘掛けにおそらく素肌の肘の存在。柔らかくひんやりとした質感が季題五月と響き合う。──小沢麻結


バビロンの滅亡に似て牡丹散る(仲寒蟬)


(選評若干)

月山を寝釈迦にしたる春の雲 2点 山本敏倖

【評】 季節が春ということはよしとして、月山を囲む春の雲によって月山そのものが涅槃像に見えると見立てた。スケールの大きな句。──仲寒蟬


紅テントくらくら揺れる五月闇 4点 佐藤りえ

【評】 紅テント、先日亡くなった唐十郎主宰の状況劇場の通称。中七が、上五、下五へ両掛かりになっており、紅テントと五月闇の配合が色彩感を詩的に際立たせている。──山本敏倖

【評】 追悼唐 花園神社乱闘を思い出します──真矢ひろみ

【評】 状況劇場、唐組の紅テントだろう。その周りの、また、それが張られていない時の五月闇。時空がくらくら揺れる。紅テントがくらくら揺れる。──依光陽子


風五月句友は永遠に若きまま 2点 渡部有紀子

【評】 何となく分かるなあ。自分ひとりが歳を取ってゆくような感じ。──仲寒蟬

【評】 澤田和弥さん…──依光陽子


筍や自分で脱いでくれないか 4点 中村猛虎

【評】 筍に皮を脱ぐという季語から連想される中七以降が面白い。手間がかかる子どもの世話ともとれるが、付き合って日の経った男女間ともとれる。──辻村麻乃

【評】 櫂未知子氏の名句〈春は曙そろそろ帰つてくれないか〉へのオマージュとしても秀逸。〈春は曙〉句の話者が、女性だとするならば、掲句の〈筍〉は男性であり、「竹の皮脱ぐ」の季題諷詠でもあります。すばらしい!──飯田冬眞


汐干狩より帰りたる息を吐く 3点 依光陽子

【評】 まるで、浅蜊の化身のように、息を吐いている。疲労感と不思議な一体化・・蜃気楼の内側の遠浅の浜にでも入り込んだような、文字通り不思議な句である。──堀本吟


鳥の恋たのし並んで糞垂れて 4点 岸本尚毅

【評】 身も蓋もないですが、そうですね。地上の我々のことなど気にすることなく、飛び回っていただきたい。──佐藤りえ


鳴らせずに麦笛持って帰って来る 1点 妹尾健太郎

【評】 「持って帰って来る」という冗長な言い方の中に残念がっている作者の気持ちが籠められている。傍から見ると滑稽なのだが。──仲寒蟬