2024年7月26日金曜日

■ 第48回皐月句会(4月)速報

投句〆切4/11 (木) 

選句〆切4/21 (日) 


(4点句以上)

9点句

唇の奥に舌ある女雛かな(中村猛虎)

【評】 舌禍は秘めている、と捉えることもできましょうか。口は閉じているものも開いているものもありますね。顔のデザインも徐々に変化しているとか。──佐藤りえ


7点句

合掌にかすかなすきま木の芽風(望月士郎)

【評】 近く或いは遠くの何かを願い恃んで人は掌を合わす。心満たされている時ではなく足りない時。どれほど強く掌を合わせてもそこには隙間が出来てしまう哀しさがある。木の芽のように形作られた合掌のすきまに木の芽風が入り抜ける。ほんの少しの命の煌めきを必要としている人のために。──依光陽子


6点句

傘といふ野暮置いて出る花の雨(仲寒蟬)

【評】 加藤郁乎の句ぶりを思い出す。助六のような小道具や舞台だ。「傘という野暮」と言い切るには、花の雨に濡れて出て来る主人公なのだろう。しかしこれだけ準備万端しつらえると、逆に野暮を皮肉るというのも野暮に見えて来る。本当の粋はこんなことを言ったり考えたりしないのだろう。とつい思いたくなる。そんなことを考えさせる句だ。──筑紫磐井


5点句

蜜蜂や全長見ゆる野辺送り(仲寒蟬)


4点句

やがて来るものの如くに春の雲(岸本尚毅)

【評】 例えば麓から来る郵便夫だったり、定期船だったり、自他の死をも除外しないさまざまな事を今は漠然と思っている。その明暗や伸縮やさまざまに変化する形など漠とした思いと春の雲はそっくりなのでした。──妹尾健太郎


手から手へゆつくり渡す染め卵(辻村麻乃)

紋白蝶舌の長さを見せ合へり(田中葉月)

まどろみのまなぶた初蝶のつまさき(望月士郎)

春の死や楽譜に雨の音を足し(依光陽子)

おくれ毛を愛すゆふべも鳥帰る(松下カロ)


(選評若干)

つくしんぼ一斉蜂起とまでいかず 3点  水岩瞳

【評】 土筆の群れ立つ姿は蜂起を思わせます。しかも裸の民のよう。だけれども蜂起するほどの数ではなかったのでしょう。蹴散らされて終わってしまう存在です。──篠崎央子