2021年10月1日金曜日

【新連載】北川美美俳句全集3(番外編)

 (1)前回まで、「豈」に発表した北川美美の作品を掲載してきたが、美美が「豈」に入会する直前に資料として送ってきた作品があるので、今回は忘れないうちにこれを紹介する。「豈」以前であるから「面」か美美が参加した句会での発表作品ではないかと思う。

 山本紫黄に手ほどきを受け俳句をはじめたというので、紫黄の選を受けた句も混じっているのであろう。

自選25句

 飾海老海に妻子の遺されし

 幸不幸決めてください初鏡

 不機嫌な現実・現在・日向ぼこ

 たんぽぽよ繋がって繋がってあなたへ

 西東忌飛び級していく帰国子女

 三鬼の忌白きシーツの皺の中

 白い部屋ヨーコを探す春の午後

 母の日と存じております御母様

 臍の緒は桐箱にありヒヤシンス

 石神井の愛人宅は薔薇盛り

 夏が来た離婚記念日朝ごはん

 鉄線花女三代左利き

 パリロンドンソウルトーキョー吊忍

 タマといふ猫と愛人墓洗ふ

 沖つ風秋のない島おさびし島

 夜もすがら栗むく小さき台所

 穴まどいテレヴィアンテナ塔の魔女

 以前から嫌いな女月見豆

 三田一丁目クスリ屋の角秋の暮

 楔打つ二百十日の歯医者かな

 千年の夜長がつづく交差点

 毛皮脱ぐ空気の薄い防音室

 精肉に塩を擦り込む聖誕祭

 満州に置き去りにした雪女郎

 ビニールの中で浮いてるおでんかな


(2)北川美美の経歴はあまり聞いたことがなかった。ともかくも多趣味な人であり、特に音楽や文芸・芸術など様々な活動、あるいは知人を持っていた。紹介すると言われたがあまり趣味の広くない私は紹介されても話題の接ぎ穂がないので敬遠していた。

 草月会に入り、様々なイベントを企画し、渡英の経験もあり、晩年は自らシュトレーンやグラノーラを作り、ビー・ハンパ―・コレクションという店をつくり卸していた。独特の製法でファンが多かったようだ。店のチラシが見つかったので、添えておく。



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